仲のいい医師がカジュアルに普段の治療について語り合う 「ディジーズ・バー」で國松先生が「病気」を注文する真の理由

2023/12/28

「ああ、なるほど。要するに、医局での医師同士の雑談で普段話してるような内容ですね。できると思いますよ。面白いかもしれないですね」


目黒の居酒屋で、当時僕が考えていた番組のアイデアを話すと、國松先生はわが意を得たりとばかりにほくそ笑みました。「ディジーズ・バー」の企画が立ち上がった瞬間です。


CareNeTVの番組企画で難易度が高いのは、実は「治療」の話です。「えっ、いろいろな疾患の治療を解説してる番組いっぱいあるよね?」とあなたは思ったかもしれません。確かにたくさんあります。しかし、それらはエビデンスに基づいた診療ガイドラインに沿った定型的な治療内容であるものがほとんどです。


それを逸脱した、つまりその先生の経験に基づく治療については誰もなかなか話してくれません。収録の合間などに水を向けると「そんな根拠のない無責任な講義はできない」と言われてしまいます。その結果、番組での治療の説明は、ほとんどガイドラインに書いてる通りで、オリジナリティがある講義にはなりにくいのです。


誤解してほしくないのですが、診療ガイドラインの内容やその背景にあるエビデンスを解説する講義は極めて重要だと僕ももちろん思っています。しかし、実際の患者は多彩であり、すべてガイドライン通りの治療で治すことができるわけもありません。そんな時、有能な医師はどのように対応しているのか?そのノウハウを番組で伝える方法はないか?僕はずーっと考えていたのです。


國松先生にそんな相談をすると、冒頭の答えが返ってきたので、企画は即ゴーサイン。番組の形式も仲のいい医師同士の雑談風にしようとすぐ決まりました。きちんとした講義だとしっかりとしたエビデンスがないことは言いづらい。完全オフのときの雑談ならば、「僕はこんな時こうしてるんだけど、先生はどう?」とお互いが普段考えていること、やっていることをカジュアルに話せるし、まあ許されるのではないかと考えたわけです。


そういう意味で「ディジーズ・バー」は、CareNeTVの中でも異色で実験的な番組ですが、視聴者の先生方にはおおむね好意的に受け入れられています。医師であれば一廉の先生の教科書通りとは限らない治療の選択に興味をそそられるのは当然ですよね。


ちなみに、バーという設定と「ディジーズ・バー」のネーミングは僕が考えました。これに大ウケしていたのは、ほかならぬ國松先生自身。なぜなら(先生を知る人の間では有名な話ですが)、國松先生はお酒をまったく飲まないからです。だからこそ先生は行きつけのバーで夜な夜な「病気」を注文しているのでしょう。


※続編の「ディジーズ・バー2」も現在好評配信中です。


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