なぜ左右対称で大きさがバラバラなのか?皮疹から病気を推理する楽しさを知る

2020/11/28

 水曜午後9時からNHK BSプレミアムで放映されている『刑事コロンボ』。僕は毎週欠かさず録画して観ています。大半の回はすでに何度か観ているし、結末を覚えていることもある。でも、必ず最後まで楽しめる。その“感じ”はご理解いただけるでしょうし、そうした“コロンボ好き”が山ほどいるからこそ、20年以上前の番組が繰り返し再放送されるわけです。


 臨床医学教育番組で、このような永遠に変わらない価値を持つコンテンツを作るのは至難の業です。それは言うまでもなく、医学は進歩を続けており、10年もすれば、かつての治療法がまったく行われなくなっていたり、より精度が高い検査機器が開発されていたり、新しい疾患が発見されているといったこともしばしばあるからです。


 そんな中で、僕がCareNeTVの番組群で「不変の価値」を感じる数少ないものの1つが、『平本式 皮膚科虎の巻』です。平本力先生が、内科医向けに、難解な皮膚科診療の必要十分を指南するプログラムですが、看板に偽りなく、そのアプローチがオリジナリティに富んでいて、哲学すら感じます。2004年リリースなので、16年前の作品ですが、今でも楽しみながら十分な学びを得ることができます。


 何が凄いのかは番組を観ていただくのが早いですが、文章で説明を試みるなら、それは、皮疹の特徴と診断名を機械的に結び付けて覚えさせるのではなく、その皮疹はなぜそのように発現したのか、論理的に突き詰めていく面白さにあります。


 そのカギになるコンセプトが「因・機・疹、遠・近・考」の考え方。すなわち、その皮疹が体表にそのような形状で発現したのは、何が原因で(ウイルスなのか?器械刺激なのか?炎症なのか?等)、どのような機序だったと推理できるか?そのために、まず遠くから体表を全体的に見て分布を把握し、次に近づいて仔細に皮疹の特徴(大きさ、色、形、境界等)を観察する。そして、結論が出るまで繰り返し考える。さながら、刑事コロンボの捜査のようです。


 もちろん、「左右対称の発疹は内因性の可能性が高く、まず中毒疹を考える」といったわかりやすいtipsもたくさんちりばめられていますが、それが、そもそもなぜそうなるのか?から解き明かしてくれるので、腹に落ちて、しっかり頭に残るのです。


 で、オープンニングがなぜか時代劇。その演出に古さを感じますが、その古ささえも心地よく感じる、観て損のない名作です。

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