肩の痛み、腰の痛み、膝の痛み…
中高年の多くの方が抱えている悩みであり、内科疾患でかかっている患者さんからもそうした訴えを聞くことはよくあるでしょう。
あまりに日常的すぎて決定的な解決策もなく、内科医としては湿布を出すくらいしかできない。そう思い込んでいないでしょうか。
確かに、そうした面は否定できません。しかし、患者の主訴から鑑別診断を挙げ、所見を取り、必要な検査を行い、可能性が低い疾患を除外して診断を絞り込んでいく。整形外科疾患にもそういう王道のアプローチが当然あります。
「藤井チャートならわかる!整形外科診断」は、まさにそこにフォーカスした番組です。
肩痛、腰痛、膝痛などを「ある程度の年になったら仕方ない」で済まさず、偏見を排して白紙から診断して治療につなげるプロセスをロジカルに展開します。整形外科ど真ん中のコンテンツですが、そのアプローチは極めて“内科的“で、コアなCareNeTV視聴者に高い評価をいただいています。
たとえば、膝痛。高齢女性に頻発する症状ですが、どうアプローチしていくか?まず初めに①外傷かどうか②関節液貯留はあるか③疼痛部位はどこか、の3点を考えます。関節液は、色が黄色・透明なら変形性膝関節症、黄色・混濁なら感染、炎症、血腫が引けたら靭帯損傷、骨折が原因と考えられます。
高齢者によく見られる変形性膝関節症は、鵞足炎との鑑別が重要です。ヒアルロン酸注射が適応になるか否かなど、治療法が異なるからです。いずれも歩行時痛が主訴となることが多いですが、疼痛部位が異なり、変形性膝関節症は内側関節裂隙、鵞足炎は脛骨近位内側(鵞足部)です。それぞれの身体所見の取り方、評価の仕方も実技でわかりやすく解説しています。
なお、変形性膝関節症では、関節液はある場合もない場合もあります。
番組では、こうした症状を起点とした、身体所見、検査、鑑別、治療というオーソドックスな診療の流れを、頸部、肩、肘、手関節、腰、鼠径部、膝、足関節と上から下へ指南していきます。あくまで体系的かつ論理的に、わかりやすく。
王道ゆえに派手さはないかもしれませんが、内科系のプライマリケア医、専門医に、整形外科の視座から診療に確かな深み与えてくれる。そんな良質な作品だと思います。