コロナ後のCareNeTVのオリジナル番組で一番のヒット作はこれ。2024年4月リリースの「Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬」です。数多ある抗菌薬の適応や特徴を片っ端から暗記するのではなく、抗菌薬が進化してきたストーリー、物語の中で覚えていく。このコンセプトが臨床医の先生方に大刺さりしたようです。
物語は当然、世界初の抗生物質の誕生。イギリスの細菌学者であるアレクサンダー・フレミング博士による1928年のペニシリンの発見に始まります。面白いのは、当時のペニシリンのターゲットは、黄色ブドウ球菌だったこと。ご承知の通り、現在黄色ブドウ球菌は基本的にペニシリンに感受性はありません。一方で、ペニシリンGは今なお現役の優秀な抗菌薬であり続けています。それは、なぜか?
伊東先生は、このようにペニシリンに始まるβラクタム系抗菌薬が開発された背景とセットでそのスペクトラムや特徴を視聴者にインプットしていきます。βラクタム系薬に続く非βラクタム系薬は、βラクタム系薬との関係性の中でその位置づけを説明。抗菌薬について覚えるべき事項を鳥瞰的に捉えるのではなく、開発の歴史とストーリーの中で文脈として頭に染み込ませていきます。
この画期的な方法、伊東先生×ケアネットのコラボレーションで生まれました…と言いたいところですが、完全に伊東先生のオリジナルです。先生が東京大学の感染症内科にいた時に、研修医に教えていた方法がユニークでわかりやすいことに目を付けたケアネットの編集者が、それをベースに映像化、番組化することを提案したのです。
しかし、「ストーリーで語る」という番組タイトルは、ケアネット側のアイデアです。このコラムでたまに書いているように、番組のタイトルは僕らが一番頭を使う部分です。伊東先生のオリジナルで画期的な抗菌薬の覚え方、プロのナレーターか?と疑わせる淀みのない語り口。その実体と雰囲気を一言で伝えられる枕詞として捻り出しました。
このワーディングの背景には、実は、僕が感銘を受けた1冊の本があります。一橋ビジネススクール特任教授の楠木建氏による「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」です。「優れた経営戦略には物語がある」というのが同書のキーメッセージで、読み物としても楽しく読めて役立つビジネス書として大ヒットしました。
帯に書かれていた「戦略の神髄は 思わず人に話したくなるような 面白いストーリーにある」というコピーがめちゃくちゃキャッチーで、内容もさることながら、その切り口に編集者としても唸らされた1冊です。
番組では、伊東先生がラジオパーソナリティのようにラジオブースで講義します。この演出も「ストーリーで語る」雰囲気を伝えるための着想ですが、伊東先生のしゃべりの上手さと相まってバッチリはまりました。
ともかく伊東先生の個性と才能が存分に発揮されたCareNeTVらしい快作です。まだご覧になっていない方はぜひ!


