医学書とは明確に異なる映像医学教材の価値。その最たるものが音声だと思う。もちろん画像の動きを見せられるのは映像ならではあるが、「絵」に関しては書物でも連続写真などでそのポイントを示すことはできる。しかし「音」だけはいかに擬音語などを駆使しても、正確に表現できない。
CareNeTVの数多くの作品群の中で、その強みを最初に体現したのが『Dr.さわやまの心音道場』であろう。2006年4月にリリースされた作品だ。
第2回「過剰心音」。18歳、男性。主訴は胸痛。心尖部で低音のIII音が聴取された。いわゆるギャロップリズムで、拡張型心筋症かと思われるが、然に非ず。これは生理的III音と呼ばれ、診断は異常なし。
では、生理的III音と病的III音はどう聴き分けるのか?
生理的III音は、I音、II音が大きく、III音の音程が病的III音より高い。一方、病的III音は、I音が小さく、III音の音程が低い、というのがその答え。この番組では、その違いが生じる理由、機序だけでなく、実際にどう聴こえるのかまで「音」で教えてくれる。
もちろん、これはほんの一例にすぎない。『Dr.さわやまの心音道場』は、全編、聴診の達人・沢山俊民先生の匠の技と心音で埋め尽くされている。今年85歳になる名医の往年のテクニックがクリアな音とともにしっかり記録されていること自体に意味がある。
「作成時期は10年以上前だが非常に価値があります」(60代 勤務医 リハビリテーション科)。
CareNeTVでは、2018年11月から番組に対する評価をユーザーが自由に書き込めるようにしているが、最近この番組に対して大変うれしいコメントが寄せられていた。誰もが首肯するだろう「時が流れても変わらぬ価値」を一度玩味してほしい。