なぜ、胸部X線「ルネッサンス」なのか?

2020/02/24

番組や記事のタイトルをつけるのは、楽しい仕事です。しかし、同時に難しくもあり、責任も感じます。なぜなら、どんなにいいコンテンツもタイトルがイケてないと、視聴者や読者がそもそも開いてくれない、よって、見てくれないからです。一目でそのコンテンツの意味や価値、雰囲気を巧く伝える「カッコいいタイトル」付けには、毎回ない頭を絞って、絞って、絞り抜きます。


『Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス』


2016年制作の番組ですが、今見てもまあまあよくできたタイトルではないかと思います。手前味噌ですが。


言うまでもありませんが、ルネッサンスは14世紀にイタリアで始まった古代ギリシャ・ローマの文化を復興させようという文化運動のことです。語源的には、フランス語で「誕生」を意味するnaissance(ネサンス)に接頭辞reが付いて「再び生まれること」を意味します。


この番組は、CT、MRI全盛の現代において、誤解を恐れずに言えば、少々古びた画像検査である単純胸部X線の価値を、長尾大志先生の名ティーチングによって復興、再生させることを目指しています。


番組の冒頭で、先生が話しているように、日本ではCTが広く普及していますが、それでもCTを撮れない状況はいくらでもあります。そんなとき、X線写真でも病状をしっかり把握できるスキル。CTが3次元で複雑で詳細な画像情報を提供してくれる時代だからこそ、「単純」なX線を読み解く属人的なテクニックに光を当てたのです。


当然、胸部X線をきちんと読影するためには、胸部の解剖がしっかり頭に入っている必要があります。なので長尾先生は、まずブロンコ体操の繰り返しで肺の解剖を脳に染み込ませます。そして、シルエットサインなどのテクニックを駆使して、X線写真という2次元のイメージを頭の中で立体的に捉えていきます。長尾先生の読影テクニックは、臨床ですぐ役立つだけでなく、謎解きにも似た知的刺激に満ちています。要するに、楽しい!


こうした画像診断の世界を平易に説明するには、書籍より映像の方が優れていることは同意いただけるでしょう。より理解しやすくするために3次元CGには結構お金をかけました。肺が空間に浮かんで回っています(笑)。そういう意味でもお得です。


そんな長尾先生の胸部X線ルネッサンス運動の成否を、ぜひ映像で見届けてください。

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