誰もが診るカゼに絞って漢方の深みを知る

2021/12/25

漢方というのは、とてもユニークな医学です。誤解を恐れず言えば、“不思議な医学”だと思います。


現代科学ではなく、古代から伝わる経験に基づいている。その一方で、確立された独自の体系を持っている。


日本人医師でその体系を十全に理解している先生はあまりいない。しかし8割以上の臨床医が日常的に当たり前のように漢方薬を処方している。とても不思議な世界です。


そのような世界ですから、漢方というものに対する先生方のスタンスも多様です。「漢方の理論をしっかりと理解したうえで、その理論に基づき適応を見極めて処方すべき」と考える正統派の先生もいれば、「効くといわれる処方のパターンだけ覚えて、適宜使えばいい」という現実的な先生もいます。先生ごとに考えに濃淡があって、中には漢方をあまりあてにしていないという人も。


しかしながら、8割以上の医師が日常的に使っている以上、漢方にまったく興味がないという先生はほとんどいないはずです。


CareNeTVでは、そうした漢方をとりまく実情を踏まえ、さまざまなタイプの番組を制作してきました。


『Dr.加島のカゼを直す漢方』もそんな試行錯誤の中で生まれた番組です。


加島雅之先生は、先の分類で言えば、正統派の先生に属すると思います。一方で、日々患者を診る第一線の臨床医であり、多くの先生に漢方の凄さの少しでも知ってもらい、とにかく漢方を日常診療に役立ててほしいと希求する現実的な面も持っています。


言うまでもなく、漢方理論をゼロから説明して多くの疾患を実際に治せるレベルまで講義するのは簡単ではありません。そこで加島先生とお話しする中で、風邪という誰もが診るもっともコモンな疾患に絞って、理論と実践を網羅するという方針になりました。


第4回以降を見ると、具体的な風邪症状に対する漢方薬の使い方がクリアにわかるのですが、第2回「漢方の基本の枠組み」第3回「漢方でカゼを診断する」あたりにこのシリーズの真骨頂があると僕は思っています。


「証」「精気」「五臓」「六腑」「四診」「八綱弁証」「傷寒」「温病」など、漢方独自の概念がそれぞれ何を意味していて、どのように体系づけられているか?謎解きにも似た知的好奇心をそそられ、漢方理論で風邪を診断してみたくなるでしょう。


これからのシーズン、外来に数多く訪れるであろう風邪症状の患者を診ながら、より効果的な処方ができるよう“漢方脳”を鍛えるのもよいかもしれません。

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