ある日、なんとなくテレビを見ていて、新しい企画を思いつきました。見た番組は「マイケル・サンデルの白熱教室」。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が「正義」「貧困」「環境」といった簡単に答えの出ない骨太なテーマを講義、学生と議論する。形と中身を変えながら、NHKで10年以上不定期で続いている番組です。
その2022年版を久しぶりに見たのですが、コロナ禍ということもあるのでしょう、いろいろと変わっていました。学生はみんな遠隔からのオンライン参加。その代わりハーバードからだけでなく、日本から東大・慶応、中国から精華、復旦という3極のトップ大学の学生がバーチャルで一堂に会します。
これがまあ面白い。
へぇー、近ごろの優秀な大学生はこんなこと考えてるんだー、って感じ。考えてみれば、僕が日頃話す若者はせいぜい30前後で、自分の子どもを除けば、学生と話したことなんてこの数年ない。Z世代、イマドキの若者のことなんて全然知らない。さらに、日米中での考え方の違いも見事に浮き彫りになって、ついつい見入ってしまいました。
正直何かの役に立つわけではないけど、知的好奇心が刺激される完成されたエンタテインメントにしっかりなっている。さすが、NHK!
そこで、このやり方をそっくり「日本の医療」に置き換えてみました。それが先日ケアネットライブで配信した『Dr.ヤンデルの灼熱教室』です。
病理医でありながら、なぜかMCがめちゃくちゃ上手なDr.ヤンデルこと市原真先生に、サンデル役をお願いし、日本の医学生10人をオンラインで結びました。テーマは「地域医療」「感染症」「医師の給与」の3つ。
僕ももちろん収録現場に立ち会いましたが、これが抜群に面白い。ヤンデル先生と医学生たちのやり取りを見ながら、これは本家NHKを超えたな、と密かに自画自賛。快哉を叫んでいました。
ところが、ところが、ライブの視聴数は意外にも芳しくありませんでした。見た人はみんな一様に「面白かったー」と言ってくれるのですが…。
そんな話を社内のほかの部署の後輩に話すと、
「マイケル・サンデルの白熱教室ってそもそも何ですか?」
「えっ?マイケル・サンデル、白熱教室、知らないの?そんな人いるんだー」
「全然知りません。オレ、やばいですか?」
驚いてほかの何人かに聞いてみたら、知らない人、結構いました。ガンバレ、NHK!
(そこが原因だったのか?)
ということで、まだ見ていない方、CareNeTVにアーカイブを公開していますので、騙されたと思って、ぜひご覧ください。
正直何かの役に立つわけではないですが、医療者なら絶対に面白いと思うはずです。とくに、若者と直接話す機会が少ないベテランの先生方にお薦めです。見て損のない上質な知的エンタテインメントに仕上がっています。