CareNeTVで取り上げている多様な臨床のテーマでとくに人気の高いものに心電図があります。数人の講師がさまざまな形で心電図の読み方をわかりすやく講義してくれています。それぞれに個性、特徴があり、自分の好みやレベルに合わせて選んで勉強していただければと思いますが、今日は、心電図番組としては全期間ランキングでトップの「Dr.香坂のすぐ行動できる心電図 ECG for the Action!」のすごさを語らせてください。
香坂先生は、優れた循環器臨床医であり、研究者であり、大学教員としては多くの後進を育てています。そのことは論を待ちません。しかし、僕が香坂先生が本当にすごいと思うのは、それら医師としての強固な土台のうえに圧倒的な「話力」が載っていることです。
世の中には、いわゆる「話が上手い」人は少なからずいます。医師の中にも当然いますし、そうした先生はCareNeTVの講師陣に何人も見つけられるでしょう。あえて言うと、そうした「話が上手い」人たちの中でも香坂先生は傑出している、と僕は思います。
例えば、故スティーブ・ジョブズ。伝説となった2005年のスタンフォード大学で行った卒業祝賀スピーチを、彼以外にできるでしょうか。言葉の選び方、声音、表情それらすべてを持って聴く者の心をつかみ、揺さぶり、強いメッセージを伝える。比肩するスピーカーはそうはいません。
香坂先生のレクチャーを聴いていると、講義が上手い大学の先生の授業というより、ジョブズのスピーチを聞いているような気分になるのです。
「Dr.香坂のすぐ行動できる心電図 ECG for the Action!」の最終回で「カッコいい心電図の読み方」について彼は語ります。4枚の心電図を提示。心電図の波形の特徴から心臓の状態を仔細に解釈し、次々と一発診断してみせます。どうだ!これこそが「カッコいい心電図の読み方」だ…という話ではないのです。
最後に推理小説なようなどんでん返しがあり、真に「カッコいい心電図の読み方」がどのようなものか視聴者の胸に刻んで講義が終わります。11分のレクチャーに情報が詰まっているだけでなく、キャッチーな導入があり、巧みなストーリー展開があり、意表をつくどんでん返しがあり、“腹落ち”するエンディングがある。見事です。
確かな医学的知見にストーリーテラー、プレゼンターとしての才を兼ね備えたDr.香坂の「珠玉の講義」をぜひご堪能してください。