臨床研修。医師人生で1度きりの2年間に何を経験すべきか?麻酔科医スーさんの至言

2025/03/30

CareNeTVでは、昨年から研修医に特化した「臨床研修サポートプログラム」を配信しています。研修期間に研修医に何をどのレベルで教育しているかは、臨床研修病院によって、また担当する指導医によってもかなり異なります。良い悪いは別にして、そのような実態があることはよく知られています。


「臨床研修サポートプログラム」は、そのような実情を踏まえて、臨床研修のローテート必修科目について、研修医が2年間に身につけるべき必要十分な知識とスキルをコンパクトな動画パッケージにしました。現場での研修の予習復習に使え、また現場で結果的に触れる機会がなかったテーマについては動画で補足でき、当該診療科で研修医必達レベルを示すことを目指しています。


この4月から研修医になるbrand-newな先生方にはぜひ活用してほしいシリーズですが、中でも思い入れがあるが「研修医のための麻酔科ベーシック」です。というのは、そもそも僕がこの企画を考えたきっかけの1つが、この番組の講師である鈴木昭広先生との会話だったからです。


鈴木先生は「スーさんの急変エコー裏ワザ小ワザ」制作以来、CareNeTVスクールでも毎年講師をお願いするなど、長年協力いただき、親しくさせていただいています。そのような意味で、鈴木先生は僕にとって「エコーの先生」だったのですが、本来は麻酔科医です。あるとき、先生に「ケアネットで麻酔科の番組作りませんか?」と提案を受けました。


最初、僕は正直ピンと来ませんでした。麻酔科は麻酔科を専攻するごく一部の医師が勉強することであり、CareNeTVの主たる視聴者である一般の臨床医がなぜ麻酔科を勉強する必要があるのか理解できなかったからです。しかし、先生と話していて、先生が何をしたいのか?なぜ麻酔科を非麻酔科医が学ぶ必要があるのか?わかってきました。


鈴木先生が言っていたことはだいたいこんなことです(記憶だけで書いているので正確ではありません)。


「ほとんどの医師は麻酔科医にならないし、麻酔に関心もない。ただ、どんな医師も全身麻酔がかかったようなクリティカルな状況を臨床で山ほど経験する。だから、安全が確保された環境でその状態を経験できる麻酔科の初期研修は貴重なんです。ほとんどの医師は臨床研修が終わったら麻酔科を経験できる機会はない。私は、初期研修医にこの先50年臨床医として生きていくために必要な“麻酔に関する最小限”のことを教えているつもりです」


「研修医のための麻酔科ベーシック」は鈴木先生の言葉がそのまま体現されています。そして「臨床研修サポートプログラム」は、この鈴木先生の研修医指導に対する考え方を他の診療科に敷衍したものです。麻酔科は必修科目のなかでは特殊ですが、他科でも似た側面はあるはずだと考えたのです。


臨床研修の2年間は、いわば一人前の医師になるための助走期間ですが、その期間にしかできないことがある。二度とないこの限られた時間を自分のこれからの長い医師人生に最大限活用しなければもったいない。「臨床研修サポートプログラム」がその気づきにつながれば本望です。

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