糖尿病(心身症)という病名は『19番目のカルテ』に記載されたのか

2025/08/30

心と身体は密接に結びついていて、心の問題が身体症状として現れることがあり、これを心身症と言います。医師であれば誰でも知っていることですが、実際に、先生方はそのような視点を「常に」意識して日々の診療を行なっているでしょうか?


このような問題意識から誕生したCareNeTV番組が「外来の質が上がる 心療内科的アプローチ」です。


この視点、もちろん僕が思いついたわけではありません。心身内科に関する番組が何か作れないかと大武陽一先生に相談した際に、総合内科と心療内科の専門医である先生がまさにそのような問題意識を持っていて、企画の切り口として提案を受けたのです。


「治療に難渋している身体疾患の患者の中には、心療内科的に診れば治せる患者が実はたくさんいる」と。


僕がそのような病気として真っ先に思い浮かべたのは、いわゆる“ストレス胃炎”。正式な病名では胃潰瘍や機能性ディスペプシアでしょうか? あるいは過敏性腸症候群。しかし先生が代表としてまず挙げたのは2型糖尿病でした。


(えっ、糖尿病って心身症なの?)


糖尿病そのものはもちろん血中のグルコース濃度が慢性的に高くなる身体疾患ですが、心の問題が病状の悪化や治癒の妨げになっているケースが少なくなく、逆にいえば、心療内科的にアプローチすることで、解決できる症例も多いと言うのです。そのような病態を「糖尿病(心身症)」という病名で表すとも教わりました。


というわけで、「外来の質が上がる 心療内科的アプローチ」では、一般的にはあまり心身症らしくない糖尿病をいの一番に取り上げています。


ところで、今、TBSテレビで放映されている『19番目のカルテ』が話題です。総合診療を真正面から取り上げたドラマで、当の総合診療医の先生方の視聴率は異様に高いのでは?と思うほど、いろいろな先生方がSNSでコメントされています。


その第4話(ここからはネタバレを含むので避けたい方は読まないでください)。


健康診断で糖尿病が見つかった男性サラリーマン。妻は、食事管理を徹底し、毎回病院にも付き添うなど献身的にサポートしています。しかし半年経っても検査結果は改善しません。


妻は自分の努力が数値改善につながらないことにイライラし、「なんで良くならないのよ」と患者である旦那に厳しく当たり、ついには担当医が悪いとクレームを入れます。


松本潤扮する主役の総合診療医がこの問題を“解決”するわけですが、その手段は薬物療法などの“治療”ではありません。夫婦関係から生じた患者の気持ち、その気持ちから起こった患者の行動、つまり原因は心の問題であり、それを解きほぐしたのです。


あっ、これも糖尿病(心身症)の1症例なのかなと思った次第。さて、カルテに病名はどう記載されたのでしょうか?

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