Dr.浅岡の楽しく漢方~古代からの贈りものII~(全9回)
シリーズ解説
- 第1回 恥じらい/二味の処方解説(1)
- 第2回 恩恵/二味の処方解説(2)
- 第3回 節操/三味の処方解説(1)
- 第4回 純真/三味の処方解説(2)
- 第5回 幸福/四味の処方解説(1)
- 第6回 変身/四味の処方解説(2)
- 第7回 美しい日々/五味の処方
- 第8回 好意/六味の処方
- 第9回 配合の妙/七味の処方
配信中の番組
第1回 恥じらい/二味の処方解説(1) プレミアム対象
- 2012/12/26(水)公開
- 84分59秒
近年、日常臨床の場で広く使われるようになった漢方薬。その特徴は、(1)生薬から成っていること (2)複数の生薬を混合した複合剤であること(3)生薬の混合は東洋医学的発想からなされることです。そして、漢方を理解するポイントは漢方薬が西洋薬ではないことをはっきりとさせること。漢方薬は西洋医学のルールや論理に従ってつくられてはいないので西洋医学の考え方をもって理解しようとしても、正しい把握は不可能といえます。また、生薬を複合してつくられている薬剤なので、「構成する生薬一つひとつの働きを知ることが全体の薬能の理解につながる」ということを認識する必要があります。
また今回より、後半に「第二部」として、処方解説のスライドショーをお届けします。このコーナーでは「二味処方」「三味処方」などの単純な処方から徐々に薬味の多い処方へと話を進め、漢方薬誕生のルーツを探ります。
◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第2回 恩恵/二味の処方解説(2) プレミアム対象
- 2012/12/26(水)公開
- 85分0秒
薬剤の適応を考える順序は、「〇〇作用のある成分がある→その成分が含まれた□□薬には〇〇作用がある→〇〇作用が有利に働く△△の人がいる→△△の人に□□薬を投与する」という表現が正しいはずです。これを「△△の人に□□薬を投与する」あるいは「☆☆病には□□薬」という文章だけにしたらどうなるでしょう。そこには選択の根拠も、なぜ適応となるかの理由も書かれていないわけですから十分な表現であるとは言えません。
漢方薬も薬剤であるかぎり、その薬剤が対象者に対してなぜ適応をもつのかを理解しなければなりません。そのために漢方薬の適応、根拠を示す「東洋医学の用語」や「考え方」が必要になります。もしそれを避けると、「☆☆病には□□薬」と表現するしかなくなってしまい、根本的に納得できないことになります。
生薬の複合剤である漢方薬を理解するためには東洋医学の考え方を知る以外に方法はないのですが、東洋医学の考え方は日常的なセンスで処理できる範囲ですから、決して難解ではないのです。
◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第3回 節操/三味の処方解説(1) プレミアム対象
- 2012/12/26(水)公開
- 87分5秒
漢方薬を理解するためには「その最少単位が生薬である」ということを認識する必要があります。
西洋薬の場合、最少単位は原子・分子として認識され、基本的には1つの薬剤に含まれる有効成分が単一ですが、生薬を最少単位とする漢方薬の場合は事情が異なります。最少単位である生薬自体がすでに複数の成分から成っているからです。複数の成分を含む生薬に複数の薬能、適応があり、その複数の主治を持つ生薬をさらに複合したものが漢方処方なのです。このような薬剤を単一の有効成分からなる西洋薬と同じ扱いをすることには無理があるはずでしょう。
漢方処方を正確に理解する唯一の方法は、それを構成している個々の生薬の薬能を知ることです。最少単位から理解するという意味においては西洋薬を理解することと本質的には同じことになりますが、漢方薬の最少単位が生薬であるということを忘れてはいけません。
◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第4回 純真/三味の処方解説(2) プレミアム対象
- 2013/01/23(水)公開
- 85分24秒
漢方処方を理解するためには、それを構成している生薬の性質を把握することが前提となります。そのために用意されたものが「薬性」、その表現には次の5通りがあります。
1) 補・瀉
不足(虚)しているものに対しては補の性質を持つものを与え、逆に過剰(実)ならば瀉して中庸に向かわせる
2) 熱・寒
冷えているなら熱を与え、熱くなっているなら冷やす(「温・涼」という表現は「熱・寒」に比較して程度が激しくない場合に用いる)
3) 潤・燥
乾いているなら潤し、湿りすぎていれば乾かす
4) 昇・降
降りていれば上げ、上がっていれば降ろす
5) 散・収
滞っていれば散らし、散漫になっていれば収める
薬能と共に5つの薬性を上手に活用し、様々な病態に対して必要な生薬をあてて操作を行うのが漢方治療です。そして虚実・潤燥など「状態を表現する用語」が東洋医学の診断、すなわち「証」なのです。
◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第5回 幸福/四味の処方解説(1) プレミアム対象
- 2013/01/23(水)公開
- 89分0秒
不快な症状や異常な状態に対応するのが治療ですが、治療を行う際にはどのような病態なのかを探り、そこから対応策を講じることが必要になります。
西洋医学を例にすると、「高血圧」という診断に対して行う治療は一通りではありません。もし、腎臓に問題があり、結果として血圧が上昇しているのならACE阻害剤やARBが選択され、副腎からのカテコールアミン分泌が過剰になっているならαblockerが適応となります。その他にも病態に呼応して様々な治療が選択されます。
では、漢方薬の場合にはどうでしょう。「○○には△△湯」という記述が見られますが、これは病態に関する既述を省略した表現であり、漢方薬選択の根拠を示しているわけではありません。「□□という病態が元で、○○という現象が起こっている、だから△△という薬物を用いる」これが正確な表現になりますから、漢方も「病態」によって選択される薬が異なります。そして「病態」の表現を東洋医学用語で行うことが、正確な対処方法を導く基本なのです。
◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第6回 変身/四味の処方解説(2) プレミアム対象
- 2013/01/23(水)公開
- 90分0秒
漢方薬は様々な生薬を複合することによって得られる薬剤ですが、当然のことながら複合するにはそれなりの目的があります。どのようなものが考えられるかと言うと、 1)副作用を減じるため 2)複数の愁訴に対応するため 3)薬能を強化するためが主なものです。 さて、この「複合する意図」ですが、西洋薬を複合して用いる場合と漢方で生薬を複合する場合との間に発想の違いはあるのでしょうか。答えは否。必要に迫られて薬剤を組み合わせるということに関して原理的な差異はありません。生薬を複合することが漢方処方の特徴と言われることがありますが、その手法自体は東洋医学の特徴でもなければ西洋医学との違いでもないのです。 「薬の違い」という観点だけから東西医学の違いを理解することはできません。あくまでもその基本となっているシステムの相違に目を向けなければその答えは得られないのです。 ◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第7回 美しい日々/五味の処方 プレミアム対象
- 2013/02/27(水)公開
- 89分1秒
漢方薬を構成している生薬の薬能は長い時間をかけて確かめられてきました。使われるようになったきっかけは偶然もあるでしょうし、ヒト以外の動物の所作に習ったものもあったでしょう。色や味、採取場所、香り、様々な事柄がヒントになったに違いありません。その歴史は漢方三千年などと言われますが、自然界に薬を求めたのは古代人も同じこと。様々な生薬に薬効を期待し、試し、適応を模索してきました。
しかし、時代によって必要とされる薬能が変わります。手軽に抗生物質を手に入れることができる時代とそうでない時代では細菌との付き合い方にも変化が生じますが、現代社会では漢方薬に何を期待しているのでしょう。日進月歩で開発される医療技術、薬剤、検査。そのなかで数万年前から培われた古代の知恵を活用するとはどういうことなのでしょうか。西洋薬にない薬能を期待するのか、はたまた自然の生薬に安心を感じたいのか。その理由を考えることは東洋医学を学ぶ意味の答えを導き出すヒントになるはずです。
◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第8回 好意/六味の処方 プレミアム対象
- 2013/02/27(水)公開
- 86分59秒
漢方薬を構成している生薬には守備範囲があります。身体のどの部分に作用するのかということですが、それを知ることはとても重要です。 複数の生薬を重ねる意図のひとつとして、主治したい部位をもとに組み合わされる場合があります。例えば、表を熱する「麻黄」と、裏を熱する「附子、細辛」を組み合せた「麻黄附子細辛湯(麻黄、附子、細辛)」は、表裏を同時に熱することを目的としています。 また、漢方薬の全てが全身を主治する薬剤ではありません。身体の一部をターゲットとした処方も数多く存在します。例えば、筋肉(裏)の痙攣を抑える「芍薬」と、裏の乾きを潤す「甘草」を組み合せた「芍薬甘草湯(芍薬、甘草)」は、乾いたことによって起こる裏の痙攣を主治します。 生薬の守備範囲を理解することが漢方の処方全体の守備範囲を理解することになるのは言うまでもないことです。よって、複数生薬の集合体である漢方処方を使う場合は、それを構成する生薬各々の守備範囲を知ることが不可欠になります。 ◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。
第9回 配合の妙/七味の処方 プレミアム対象
- 2013/02/27(水)公開
- 97分14秒
本シリーズもいよいよ最終回を迎えます。この漢方シリーズでは関連も含めて31種類の生薬を取り上げました。これらを配合量は考慮にいれず組合せをつくったとして、二味で465通り、三味で4,495通り、四味では31,465通り…、これに配合量まで計算に入れると組合せの数は天文学的数字になってしまいます。ですが、もちろん全ての組合せがうまくいくとは限りません。試行錯誤を繰り返し、そして有用なものだけが後世に伝えられました。 漢方処方は多く存在しますが、その基本骨格を成すものの数は限られています。したがって基本骨格に注目し、後はそれぞれの違いをその他の配合生薬から考えていけば効率よく複数の処方を理解することができます。 「漢方薬で何が治るか」ではなく「元々何を治す薬剤なのか」を把握することが理解への近道です。 そして何度も繰り返してきたことですが、漢方薬は西洋薬ではありません。東洋医学的な発想から生薬が組み合わされ、適応が模索された薬剤であるということを是非忘れないでください。 ◆番組レジメは「前・後編」に分かれています。「後レジュメ」は回答編となりますので、番組視聴後にご覧ください。