ジェネラリストとスペシャリスト。医師をそのような枠組みで分類する考え方があります。ジェネラリストは、幅広い領域を一定レベルまで診る医師、スペシャリストは専門領域を深く診る医師。ときに両者は対立軸で捉えられることもありますが、両者がうまく噛み合うことで、総体として良質な医療が効率的に提供されることは言うまでもありません。
「この番組企画したの、僕なんですよ」
『スペシャリストにQ』の収録の合間、ホスト役の前野哲博先生(筑波大学 総合診療グループ長)がゲストの各科のスペシャリストの先生に誇らしげにそう話しかけているのを目にすることがあります。ジェネラリストとしてスペシャリストに聞きたいこと。それをジェネラリスト代表として質問し、5分で簡潔にまとめてもらう。それが前野先生のアイデアであり、このシリーズの基本コンセプトです。
『スペシャリストにQ』は2013年の循環器編を皮切りに、これまで8シリーズをリリースしていますが、スペシャリストの先生にできるだけ、答えを言い切ってもらうことも大事にしています。たとえば、ガイドラインに第1選択薬が2つ、3つ並列に書かれているとき、「結局のところ、どれを使ったらいいの?」というのは、ある意味、一番素朴な疑問だからです。
呼吸器編の第7回「COPDの薬物療法は何から始める?」。当時のガイドラインでは並列の位置付けだったLABAとLAMAについて、長尾大志先生(滋賀医科大学 呼吸器内科)は「われわれの感覚ではLAMA」と言い切ってくれています(のちに、LAMA優先にガイドラインが改訂)。これこそが本シリーズの目指すところであり、真骨頂です。
ジェネラリストの素朴な疑問に対して、スペシャリストが変な忖度なく、臨床家としての誇りと自信を持ってスパッと答える。そんなジェネラリスト+スペシャリストな世界観をこれからも体現していければと考えています。