数多あるCareNeTV番組の中で、長く支持を集め続ける作品には、それなりの理由がある。ヒット作の見所を、講師の先生の素顔、収録秘話を含め、ケアネット編集長の風間がご案内します。
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医師を魅了する「一発診断」の世界 2022/06/25
一発診断。何人かの先生に、若い頃「それ」にとても憧れた時期があったと聞きました。言うまでもなく、診断は、問診、身体所見、バイタル、血液検査、画像検査などを行って総合的になされるわけですが、患者にある疾患の特異的な所見をすばやく見つけ、一瞬で診断をつけてしまう一発診断は、これぞ熟練の名医!のように感じられ、若い医師に魅惑的に響くのでしょうか。ところで、CareNeTVの番組は、月2回の番組企画会議で、部員に企画を出してもらい、みなで議論して決定していますが、番組制作を進めるうえで「企画」というとき、大きく3つの要素があると僕は思っています。1つ目は、番組の内容そのものの企画性。上手な問診の方法、心電図の読み方、統合失調症の治療薬の選択などなど、どのような医学的なテーマを取り上げるのか、そのテーマでどの先生に講義してもらうのか。順序が逆で、講師ありきでテーマを決める場合もありますし、講師とテーマが紐づいていることも当然多いです。2つ目は、切り口、アングルなどと呼ばれるものです。たとえば、問診の方法というテーマであれば、言葉の使い方に重点を置いたり、問診内容の病歴への落とし込みのテクニックに焦点を当てたり、といったテーマの切り取り方を工夫することで、コンテンツの質と粒度を上げていくという意味での企画性です。3つ目は、2つ目とも関連しますが、それをどう見せるか、プレゼンテーション上での企画性です。ロールプレイ中心に見せるのか、クイズ形式にするのか、アニメーションを使うのか。演出と言い換えてもよいかもしれません。書籍などの静的なコンテンツより、動画ではこの演出の要素はより大切になります。再び、一発診断。CareNeTVにこのタイトルの番組がありますが、これほど今述べた2番目のファクターが大きい番組はありません。「一発診断」というワードが一言で意味が伝わり、医師を強く引き付ける。診断というテーマに説明不要の優れた切り口を与えています。しかし、この切り口を案出したのは、残念ながら、わが部員でありません。文光堂さんがすでに発行していた同名の書籍があり、コラボレーションさせていただきました。3つ目のプレゼンテーションは工夫を凝らし、書籍とはまた違った雰囲気で「一発診断」の世界を楽しんでいただけると思います。ということで、番組企画グループ諸君、1、2、3がそろった秀逸な「企画」を期待してるよ。 -
病歴だけで診断する!バラエティ番組風に「問診」を突き詰めた異色作 2022/05/28
「僕が患者役になって、研修医に順番に問診させるんですよ。よぼよぼのおじいちゃんになったり、妊婦になったり…。性別・年齢、病気はその場で決めて、即興でやってます」小松孝行先生が順天堂練馬病院で土曜の朝、外来診療の前に毎週行っているという勉強会。その話を聞いて興味を持ちました。「一度、見に行ってもいいですか」「どうぞ、どうぞ」という感じで、見学させてもらったのが『Dr.小松のとことん病歴ゼミ』企画の始まりでした。診断で何より重要なのは病歴聴取というのが小松先生の持論。鑑別診断を想起しながら丹念に病歴を聞き出し、オンセットを詳細に把握すれば8割がた診断はつくと小松先生は言います。その技術をロールプレイで教えていたのです。帰り道でこのやり方を番組化できないか、とつらつら考えたのですが、最終的に、そのまま再現することにしてしまいました。小松先生の患者へのなりきりぶりが見事だったので、番組では少し悪ノリして、先生にいろいろ扮装してもらい、ちょっとバラエティテイストの番組に。もちろん内容はいたって真面目です。とくに細部にはとても気を使っていて、問診に対する患者の返答、反応から何を読み取り、次の質問につなげるか、その実践的なテクニックを学べるように工夫しました。研修医の先生はもちろんですが、ベテランの先生も「なるほど」と思う部分がたくさんあるではないかと思います。余談ですが、実は、僕が小松先生と初めて会ったのは、「患者として」でした。高熱で近所のかかりつけ医にかかったところ、髄膜炎の疑いがあるということで、順天堂練馬病院に紹介され、総合診療の外来でたまたま僕を診てくれたのが小松先生だったのです。髄膜炎はウイルス性で大したことなかったのですが、外来で先生と仕事の話もして、この企画につながっていきました。僕としても唯一の経験です。そんなこともあって、「病歴ゼミ」は僕にとってとっても思い出深い作品なのです。 -
「ガイドラインから学ぶ」シリーズの真骨頂 SAS診療のポイント 2022/04/23
ケアネットライブが好評をいただいています。当初は、新型コロナウイルスのパンデミックのさなか、日々変わる新型コロナ関連情報を識者にタイムリーに語ってもらうという目的で始めたのですが、予想以上に多く医師・医療者に視聴いただいたので、2021年4月から思い切って「毎週水曜日20時」に定期化しました。現在も新型コロナ関連のライブも数多く配信していますが、定期化にあたって、もう1つの軸を作りました。診療ガイドラインの解説です。僕は「ガイドラインから学ぶ」シリーズと自分で勝手に呼んでいますが、開始から1年が経過し、CareNeTVの番組の1つとして定番化してきました。コロナに次ぐもう1つの切り口を考える際、ガイドラインに目を付けた理由はシンプル。先生方のニーズがとても高いと前々から感じていたからです。CareNet.comなどで読者調査を行うと、欲しいコンテンツとして、最新論文とガイドラインの解説が必ず上位に上がってきます。一方で、現在ものすごい数の診療ガイドラインが存在し、改訂の頻度も上がってきています。ご自分の専門領域はさておき、忙しい日々の臨床の合間に、専門外の疾患の最新ガイドラインにキャッチアップしていくのは、相当大変だろうなと想像します。そのような趣旨なので、取り上げるガイドラインは、2~3年内に改訂されたもので、あまり専門的すぎず、多くの先生方が診る機会がある、知っておいたほうがよいコモンな疾患を中心に選んでいます。今から1年前。その栄えある第1回となったのが『ガイドラインから学ぶ 睡眠時無呼吸症候群診療のポイント』です。呼吸器内科と循環器内科のはざまにあるような疾患で、患者数が多く、多くの他科の先生方が外来で遭遇し、自分で治療もできる。先の趣旨にばっちりハマる疾患であり、ガイドラインだったというわけです。虎の門病院 睡眠呼吸器科の富田康弘先生の講義はすばらしく、「ガイドラインから学ぶ」シリーズの“ひな形”を見事に作ってくれました。実は当初、僕は「ガイドラインを解説するだけでいいです」とお願いしたのですが、先生は「ガイドラインの解説はしつつ、実臨床のティップスも話したほうが見た人の役立つと思いますよ」との逆提案があり、「ガイドラインから学ぶ」というタイトル案もいただきました。それ以降、単なるガイドライン解説にとどまらない、実際にその疾患を日々診ている専門医かつ臨床医の目線での「実践的な講義」をと先生方にお願いしています。 -
ティアニーと青木眞がただ語り合うこと。その100年残る価値 2022/03/26
「青木眞先生の感染症の番組をお願いします!」CareNeTVの視聴者アンケートでたまに見かけ、僕が知り合いの若い先生方と話している最中にもよく聞く意見です。周知の通り、青木先生は世界標準の感染症学を日本に広め、定着させた先駆者です。実は、かつてCareNeTVに青木先生の感染症番組があったのですが、内容が古くなったこともあり、現在は取り下げられています。そうした経緯もあり、5年前くらいでしょうか、青木先生に新しい感染症番組を制作できないか相談したことがあります。青木先生の返事は「もう僕の出る幕じゃないんじゃない?」といった感じ。実際、現在のCareNeTVは、青木先生が育てた“弟子たち”が講師陣の中心になっています。そのこと自体、青木先生が日本の医学教育ひいては医療そのものにどれだけ大きな影響を与えたかの証左でもあるわけですが、であれば逆に、「今こそ」青木先生に話してほしいことを番組にできないか?と考えました。それが後にカタチになったのが、『ティアニーと青木眞に学ぶ「医者の神髄」』です。ローレンス・ティアニー先生は、ご存じのように“診断の神様”として知られ、新型コロナパンデミックの前までたびたび来日し臨床研修病院などで症例カンファレンスを行っていました。その際、通訳兼コメンテーターとしてよく同席していたのが青木先生。そんな感じでお二人は長きにわたって公私ともにとても仲がよく、医師として尊敬し合っています。番組はその症例カンファレンスの模様と、ティアニー先生と青木先生の友情対談で構成されています。この企画に際し、ティアニー先生と青木先生に対談の主題として僕がお願いしたのは、突き詰めて言うと「いい医者って、何?」ということでした。収録当日。仲良しのお二人は終始リラックスして、ティアニー先生の飛行機の時間ギリギリまで、英語で語り合っていました。二人にとってはおそらく普段どおりのおしゃべりです。ただ、その中で随所に溢れ出る、豊かな経験と知見、深い思索と提言には、傍らで聴いていて、深く首肯し心を動かされました。ティアニーファン、青木ファンならずとも、医師という職業を選んだ方には、ぜひ一度ご覧いただきたい対談です。極端な話、100年後の医師が見ても示唆が得られる、時を越える絶対的な価値があるのではないかと思っています。 -
内科の総ざらいに 民谷式の圧倒的なわかりやすさの秘密 2022/02/26
人に何かを「伝える」ことと「教える」ことの違いは何か?「教える」ということは「教育学」という独立した学問があるくらいもとより奥深いものですが、こんな仕事をしていると、アカデミックな文脈での「教育」ではなく、平場で人にものを「教える」ことについてつらつらと考えを巡らせてしまいます。僕は若い頃はニュース記者でした。その後、雑誌編集者になり、編集長になり、紙からネットに居場所が変わり、今に至っています。CareNet.comはニュースサイトであり、僕が昔からやってきた人に情報を伝える「報道」の側面が強いですが、CareNeTVの方は「伝える」だけでは足りません。「伝えたこと」が見た人の血肉となり、その人のレベルアップにつながらなくてはならない。「伝える」の先に「教える」があると僕は考えています。10年に及ぶCareNeTVの番組制作の中で、教えるのが上手い先生にたくさん出会いました。また、一口に教え方が上手いといっても、さまざまなタイプがあることも知りました。その中でもとくに印象に残っているのが、『民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE』の民谷健太郎先生です。民谷先生は救急科専門医ですが、かつて医師国家試験予備校で講師もしていて、そのような意味で、教えるプロでもあります。僕が、民谷先生の講義を聞いた第一印象は、ありのままに言うと「なんか、わかりやすいなー」という感じ。そして、先生の講義を聞きながら次第に「なぜ、こんなにわかりやすいんだろう?何がほかの先生と違うんだろう?」と考え始めました。「民谷式…」の中で先生はオリジナルのシェーマを数多く用い、講義を進めています。それはよくできていて、とても理解を助けてくれるのですが、違いはそれだけではない気がします。そんなことを考えながら内科の全領域をカバーする合計12コマのレクチャーをスタジオの傍らで聴講した僕の結論は、「民谷先生は、難解なものをどうやって理解させるかではなく、難解なものを自分がどうやって理解してきたのか、ときに苦労して編み出した自分の頭の中での理解の仕方を、最短距離で再現し講義を組み立てているのではないか」というものです。上から目線の逆。いわば下から目線。教え方の1つの型として、自分がかつて理解したように教えるというのはあるのではないでしょうか。このように言葉にするといまひとつイメージがわかないかもしれませんが、実際に番組を見ると、僕が言いたいことがなんとなく伝わるのではないかと思います。多くの先生方はキャリアを重ねるほど、誰かに何かを「教える」機会が増えてくると思います。そんな時、民谷先生の教え方は、ひょっとすると参考になるかもしれません。もちろん内科の総復習、内科専門医試験対策にも最適です。 -
ニッチだけどすべての医療者が修めるべきプログラム 2022/01/29
「日本には体系的なプログラムはほとんどないと思いますよ」当時そう聞いたとき、とても意外な気がしたのを覚えています。救急外来や病棟で行う処置時の鎮静と鎮痛、Procedural sedation and analgesia(PSA)。処置するときに患者の痛みを和らげ、落ち着かせるために、薬物を使うことはかなりのリスクを伴うのは素人でもわかります。しかし、現場任せで一連の手順がマニュアル化されていない病院も結構あるとのこと。EBMが叫ばれ、さまざまな疾患でガイドラインが作成され、診療の標準化が進むなか、ニッチというと語弊がありますが、細かいところではまだ「勘と度胸」に頼る医療が行われている実態があるのだなーと。健和会大手町病院では、そんな状況を鑑み、米国ニューメキシコ大学が開発したセデーションの教育プログラムを輸入して改良し提供していました。これは番組化する価値ありと思い、山口征啓先生を中心とするチームと制作したのが『Sedation for All―安全で確実な鎮静・鎮痛プログラム―』です。患者のモニタリングや症例に応じた薬剤の選択、適切な薬剤の投与法など、本来ならば大手町病院で丸1日かけて実施される研修プログラムの内容を動画レクチャーでコンパクトにまとめています。ところで、「Sedation for All」ってタイトル、カッコよくないですか?僕は、仕事柄、たくさんの記事や番組にタイトルをつけてきました。タイトルを考えるのは楽しいですが、イケてるタイトルをつけるのはとても難しいものです。たくさん候補を挙げて悩みに悩んだ挙句、最終的にその時これが一番と思うものを当然選ぶわけですが、それが本当にいいタイトルだ、とわかるのは5年以上たった後。“名づけ“の評価には、時の検証が必要というのが僕の持論です。今、久しぶりに、この番組のタイトルバナーを見て、伝えたいメッセージと番組の世界感が端的に伝わり、言葉としても美しい、なかなか良いタイトルだなーと感じました。だから、僕的にはネーミングの成功例です(笑)。2014年のリリースなので多少古くなっている部分もありますが、山口先生によると、基本的なところは大きく変わっていないとのことなので、院内のコメディカルの方々を含め、すべての医療者のセデーション教育にぜひご活用ください。 -
誰もが診るカゼに絞って漢方の深みを知る 2021/12/25
漢方というのは、とてもユニークな医学です。誤解を恐れず言えば、“不思議な医学”だと思います。現代科学ではなく、古代から伝わる経験に基づいている。その一方で、確立された独自の体系を持っている。日本人医師でその体系を十全に理解している先生はあまりいない。しかし8割以上の臨床医が日常的に当たり前のように漢方薬を処方している。とても不思議な世界です。そのような世界ですから、漢方というものに対する先生方のスタンスも多様です。「漢方の理論をしっかりと理解したうえで、その理論に基づき適応を見極めて処方すべき」と考える正統派の先生もいれば、「効くといわれる処方のパターンだけ覚えて、適宜使えばいい」という現実的な先生もいます。先生ごとに考えに濃淡があって、中には漢方をあまりあてにしていないという人も。しかしながら、8割以上の医師が日常的に使っている以上、漢方にまったく興味がないという先生はほとんどいないはずです。CareNeTVでは、そうした漢方をとりまく実情を踏まえ、さまざまなタイプの番組を制作してきました。『Dr.加島のカゼを直す漢方』もそんな試行錯誤の中で生まれた番組です。加島雅之先生は、先の分類で言えば、正統派の先生に属すると思います。一方で、日々患者を診る第一線の臨床医であり、多くの先生に漢方の凄さの少しでも知ってもらい、とにかく漢方を日常診療に役立ててほしいと希求する現実的な面も持っています。言うまでもなく、漢方理論をゼロから説明して多くの疾患を実際に治せるレベルまで講義するのは簡単ではありません。そこで加島先生とお話しする中で、風邪という誰もが診るもっともコモンな疾患に絞って、理論と実践を網羅するという方針になりました。第4回以降を見ると、具体的な風邪症状に対する漢方薬の使い方がクリアにわかるのですが、第2回「漢方の基本の枠組み」、第3回「漢方でカゼを診断する」あたりにこのシリーズの真骨頂があると僕は思っています。「証」「精気」「五臓」「六腑」「四診」「八綱弁証」「傷寒」「温病」など、漢方独自の概念がそれぞれ何を意味していて、どのように体系づけられているか?謎解きにも似た知的好奇心をそそられ、漢方理論で風邪を診断してみたくなるでしょう。これからのシーズン、外来に数多く訪れるであろう風邪症状の患者を診ながら、より効果的な処方ができるよう“漢方脳”を鍛えるのもよいかもしれません。 -
インフルエンザが流行ろうが流行るまいが今見てほしい番組 2021/11/28
新型コロナウイルス感染拡大が国内では落ち着きを見せています。第6波の懸念が巷間ささやかれていますが、本稿執筆時点ではその兆候は見られません。が、このメールがみなさまのお手元に届くころには、また状況は変わっているかもしれません。かように、一寸先もわからない世界を私たちは生きています。僕が月刊医学雑誌の編集長だった10年以上前。年末に翌年の各月の特集をおおまかに定めるのですが、この月つまり11月の特集は最初から決まっていました。インフルエンザです。臨床医であれば冬場だれもが気になるこの感染症の情報をアップデートすることが(そんなに目新しい知見がないにせよ)確実に記事としてウケるからです。昨年、COVID-19のパンデミックの影響で、そのインフルエンザがまったく流行りませんでした。では、今年は流行るのか?というトピックも耳目を集めていますが、これも現時点では神のみぞ知る、です。COVID-19もインフルエンザも、多くは、初期症状は風邪とそう変わりありません。逆に風邪症状だからといって、COVID-19とインフルエンザを除外すれば、風邪であると言えるわけでは、当然ながら、ありません。もっと重篤な疾患が隠れているかもしれないからです。10年前、ケアネットでこのテーマに焦点を当てたのが、山本舜吾先生です。『“かぜ”と“かぜ”のように見える重症疾患』。タイトルそのままの内容で、風邪症状はだれもがあまりに日常的に遭遇するため、“流してしまう”リスクに警鐘を鳴らしたのです。この着眼点は当時“目から鱗”的な評価を得、今なお、多くの先生方がこの番組を日常診療に役立ててくれています。もちろんこの番組は、COVID-19など影も形もなかった時代に制作されたものです。第1話のタイトルは「“かぜ”のような顔をしてやってくる重症患者」。今だったら、そんな患者が来たら、まずCOVID-19を疑い、除外することを考えるでしょう。しかし、COVID-19が否定されても、風邪ではない重篤な疾患の可能性は残るのです。第6波が来ようが来まいが、インフルエンザが流行ろうが流行るまいが、『“かぜ”と“かぜ”のように見える重症疾患』の視座が大切なことに変わりはありません。だから、それを再認識していただくためにも、今こそ見てほしいのです。 -
英語プレゼンが確実にワンランク上がるTips満載 2021/10/28
音程を1オクターブ下げてみよう階段を下りる調子でしゃべってみよう一気にしゃべってみよう思い切って音をつなげてみよう思い切って音を脱落させてみようこれが何のためのノウハウかわかりますか?(今文章を読んでいる方は、タイトルを見てこの文章を読み始めているでしょうから、クイズになっていないのですが…)『学会で光る!英語プレゼン』講師の佐藤雅昭先生による、英語らしく聞こえる5つのsecretsです。英語というのは、日本に住む日本人にとってマスターするのがとても難しいものです。インターネットでこれだけ世界がつながっても、英会話スクールや英語教材が大きな産業であり続けているのがその証左でしょう。かくいう僕も、英語が流暢に話せるわけではありませんが、この『学会で光る!英語プレゼン』を見て、だいぶうまくなった気がします。ともかく、佐藤先生は英語が上手なだけでなく、とても頭がよく論理的な方です。日本人が英語をうまく話せない、怖気づいてしまう原因を分析し、それを解決する手段を「論理的に」「科学的に」教えてくれます。番組では、英語のプレゼンテーションの要素を、スライドのまとめ方、質疑応答の仕方、英語そのもののしゃべり方など、細かく分解し、それぞれに起こりがちな問題を解決する方法を提示しているのですが、いちいち腹に落ちます。冒頭の5つのsecretsもその一例ですが、やってみると、案外そんな気がしてくるので、ぜひお試しください。番組をご覧いただけば、その理由もわかります。なかなか面白いですよ。また、今回この番組を見直して改めて思ったのが「英語も言葉である」という当たり前のことです。つまり、先生が話していることは、日本語に置き換えてもそのまま通じるノウハウが多いのです。真剣に見て理解して実践すれば、英語プレゼンテーション、さらに敷衍すると、日々の言語コミュニケーションの上達にもつながると思います。番組で紹介していることをすべて実行できなくても、通して見れば、1つや2つは英語力がワンランクアップする自分にあったTipsがあるはずです。派手さはないですが、見て損のない、とても実用的な番組です。 -
透析のバイトに出る前にこれだけはさらってほしい 2021/09/25
「医師が自腹を切ってまで勉強したいことってどんなことだろう?」CareNeTVの新しい番組企画を検討するときは、そのことばかり、繰り返し繰り返し考えます。 自分の専門分野こそがもっとも勉強したいことだろうし、すべきことでしょうが、それは医師の本来業務に含まれており、みなさん日々熱心に学んでいるでしょう。最新の情報やより深い知見も学会などから得ているはずで、CareNeTVの出番は少ない気がします。 「透析のバイトって、みんな不安だと思うんですよねー」 ある若手の先生と雑談で、上述のようなことを話していると、こんな言葉が出てきました。 透析医療は、言うまでもなく、腎臓内科あるいは泌尿器科の専門領域です。日本透析医学会は専門医制度も設けており、現在その数は約6000人。しかし、34万人に達しいまだ増加を続ける透析患者を専門医だけが診ていくことは不可能です。 ただでさえ透析はひとたびその状態になると一生続けなければならない医療です。多くの医療者がかかわる必要があり、慢性期の維持透析に関しては、他科の医師が非常勤で対応しているケースも多いのが実情。 企画の誕生です。 「透析にあまり詳しくない先生がバイトする際、専門医の視点から『最低限ここまでは知っておいてほしい』『ここは気を付けてほしい』という内容をレクチャーしてくれませんか」。聖マリアンナ医科大学の櫻田勉先生にお願いすると、快く応じてくれました。 2017年にリリースした『透析患者を診る前に1時間で詰め込む 透析管理の基礎知識』では、血液透析のシステムと原理という基本中の基本から、透析処方の実際、検査値の見方、トラブルへの対応といった実臨床に即した、透析医療に必要不可欠な知識が要領よくまとめられています。 正直、透析管理は多くの医師にとって「自腹を切ってまで勉強したいこと」ではないかもしれません。しかしCareNeTVにわかりやすい講義があれば、バイトに行く前やちょっと気になったときに、さらっと学べる。自信を持って診療に臨める。 医師の学びのニーズは至るところにあるはずです。それを上手にお手伝いすることで、医療の質向上に微力ながら貢献できればと考えています。 -
「薬を切れる医者がいい医者」時代の「切る」技術 2021/08/28
「処方カスケードからポリファーマシーとなり、減薬が必要です」 今でこそ当たり前な言い回しですが、最初に言われ始めたころ(7、8年前でしょうか?)、とても不思議な感じがしたのを覚えています。 そもそも「処方カスケード」って何?と最初思いました。処方カスケードとは、患者が服用している薬による有害事象を医師が新たな病状と認識し、それに対して新たな処方を行うことです。当然、薬の過剰な多剤併用状態=ポリファーマシーの原因になります。 それが医療現場で普通に起こっていると知ったときは、医師の処方って、そんなにいい加減に行われてるの?と正直感じました。意味がなかったり、不要だったりするのであれば、中止すればいいだけじゃないの?と。 雑談でそのことを何人かの医師に率直に話すと、だいたいこんな返事が返ってきました。 「前医が処方してずっと飲み続けている薬は、処方理由がわからなくて、なかなか切れないものなんだよ。患者も不安がるしね」 「医者は薬を使ってどう治すか、と考えるのが当たり前で、薬をどう減らすかとはまず考えないよ」 なるほど、話はそんなに単純ではないようです。 2016年11月にリリースした『Dr.キタカズの解決!ポリファーマシー』は、ポリファーマシー状態にある処方薬の切り方を実践的に指南した番組。同年4月リリースの関口健二先生の『エビデンスベースド!高齢者向け“最適”処方術』は、いわばそれに理論的な裏付けを与える内容です。当時流行っていたのでしょうね。 ひと昔前までは、患者さんは、薬をたくさん出してくれる先生を好むとよく言われました。まだその傾向はあるとは思いますが、医学的には、その患者さんに最小限の最適処方ができる医師が「いい医師」であるのは論を待ちません。そして、時代は確実にそちらに進んでいます。 まだ、その視点をあまり持ち合わせていない先生がもしいらしたら、番組をちょっとのぞいてみてください。 -
診断+戦略、平凡な2つの単語が常識を変えた! 2021/07/29
診断戦略エッセンス。これは医学書院から発行されている、志水太郎先生の同名の著書のポイントを映像化した作品です。この企画を思いついたのは僕ですが、この本を最初に知ったとき、失礼ながら凡庸なタイトルだと感じたのを覚えています。後に、凡庸なのは僕の方だったと気づくわけですが…。 志水先生は僕が親しくさせていただいている医師の1人です。最初に知ったのは『診断戦略』の前にものした『愛され指導医になろうぜ』(日本医事新報社)という本。この本は、逆に「医学書にしては面白いタイトルだなー」と思いました。だいたい、自分のことを愛され指導医とか言っちゃう?みたいな。 この本が若手医師に評判がよいと知り、リーダーシップについて話してもらうために、志水先生に初めてコンタクトをとりました。その後、親しい共通の知り合いがいたこともあり、食事などもご一緒するようになったのです。 『診断戦略』については冒頭のような第一印象だったので、あまり興味を持っていませんでした。しかし志水先生と話しているうちに、先生がこの本で何をしたいのかわかってきました。何を書きたいか?ではなく、何をしたいか?です。 医師が臨床でよく使う言い回しに「治療戦略」というのがあります。目の前にいる患者を治すために、どんな武器を使って、どのように攻めていくか、戦略を立てるのは臨床医の常識です。一方で、診断に戦略を立てているでしょうか? 経験と勘で行われている、と言っては語弊がありますが、少なくとも戦略が治療のように体系化され、言語化されていない。 志水先生は、診断という行為も治療のように戦略をもってなされるべきだと考え、それを同書で提言した。つまり、医師の常識、従来の行動そのものを変えようとしたのです。 診断、戦略という単語は平凡でコモンなワードです。しかし、その2つの単語をくっつけるだけで新しい世界観を提示している。大上段に構えた普遍的な概念だからこそシンプルに。実によくできたタイトルだ!と後で気づきました。一方で「愛され指導医」のような奇抜でキャッチーなワーディングもできる志水先生は、コピーライターとしてのセンスも一流なのです。 実際、同書のお陰もあり、診断を科学的に戦略的に行おうという動きは着実に広がっています。本の宣伝のようになってしまいましたが、エッセンスは本番組でしっかりわかるので、まだ「診断戦略」をご存じない方は、どのようなものかぜひご覧になってみてください。 -
「内科専門医改革」が生み出した臨床教育番組のニュースタンダード 2021/06/27
来月7月4日に第1回の日本内科学会の内科専門医試験が実施されます。と聞くと、内科医以外の先生は「えっ、内科の専門医ってこれまでなかったの?」と思うかもしれません。そうです、なかったのです。あったのは「認定内科医」で、大まかにいうと、これが今回から資格のレベルを含めて「専門医」に制度変更されます。 そして2ヵ月後の9月12日には、総合内科専門医試験が行われます。これも日本内科学会による資格試験で、こちらは49回目。しかし、この試験、2013年までは1回の受験者が300~500人の規模でした。ところが、2014年以降、突然その10倍、毎年5,000人以上の内科医が受けることになります。 これらは、すべて日本内科学会の「内科専門医改革」によってもたらされたものです。改革の目的、詳細は学会ホームページに詳しいですが、認定内科医から専門医に数年かけて制度を移行していく過程で、結果として多くの内科系の先生が対応を迫られたわけです。 「総合内科専門医試験で苦労している先生が多いみたいですよー」 私がある方からこんな話を聞いたのは、2014年の終わりだったと思います。それから上述のような状況を理解し、2015年にCareNeTVで試験対策の番組を作ることを決めました。臨床で忙しい先生に効率的に合格できる知識を身につけてもらう。当初手探りで、いろいろな先生や関係者にヒアリングし、協力を得て、なんとかリリースにこぎ着けると、その反応の良さからニーズの大きさを実感しました。また、受験者以外の先生にも、内科全般の知識の再確認、アップデートに役立つと高い評価をいただいています。 CareNeTVではこれまでいくつかの内科系試験対策番組を制作し、いまや看板の一つになっていますが、何より大きかったのは長門直先生との出会いです。当時勤務されていた久留米の聖マリア病院で、認定内科医試験の内輪の勉強会を開いて後輩に教えているという噂を聞きつけ、面会に行きました。お話を聞いて、当時の認定内科医試験、総合内科専門医試験の出題傾向、相違を調べ尽くしており、驚愕したのを覚えています。しかも、通常の診療をしながらですから、なおさらです。 その長門先生による最初の番組が『認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック』。先生によると、認定内科医試験と総合内科専門医試験には共通する部分が多く、問われる知識の「深さ」に差があるそうです。よって、認定内科医試験レベルの知識をおさらいすることは、総合内科専門医試験対策のベースとなるわけです。実際、この番組は今でも総合内科専門医試験対策としても活用いただいているようです。ただし、5年前に制作したものなので、そこはご留意ください。 -
見ればわかる!生坂カンファレンスの圧倒的な「僅差」 2021/05/27
優れたコンテンツと並みのコンテンツの差は、それ自体はごくわずかしかない。しかし、そのごくごくわずかな差が、ページビュー、視聴数という「結果」においては何倍、何十倍という圧倒的な差になる。ただ、そのわずかな差を生み出すのが、途轍もなく難しい。 僕は、インターネットの黎明期から、医師が読みたい記事、見たいコンテンツはどんなものか考え抜いて、作って配信し続けているわけですが、いつもそのことを感じています。 そのわずかな差はときに言語化できません。でも、多くは見れば誰にでもわかるものです。だからこそ、人はそちらに引き寄せられていくわけですが。 前置きが長くなりましたが、僕にとって、そんなわずかだけど圧倒的な差があるコンテンツの代表格が千葉大学総合診療科の生坂政臣先生の『GMカンファレンス』です。 ご存じの方も多いと思いますが、生坂先生のGMカンファレンスは、NHKの人気番組だったドクターGの原型になっています。つまり、症例の情報を少しずつ出しながら、回答者が病名を予測し、最後に謎解きするクイズ形式です。エンタテインメント性もあり、今では、この形態のカンファレンスは医師同士の勉強会などでもよく行われています。 僕は、この“ドクターG型”ともいうべき症例カンファレンスを何度も見たことがありますが、生坂先生がナビゲートするのとそれ以外の先生では明確に差があります。もちろん、それ以外の先生もすばらしい指導医であり臨床医なのです。ただ、このスタイルの症例検討に関していえば、見比べれば、生坂先生が抜きん出ているのがわかります。わずかな差なのでしょうが、決して埋まらない差であり、その差を生み出せるのは、生坂先生だからこそなのです。 何がその差を生み出すのか?圧倒的な知識量、当意即妙なコメントを生む頭の切れ、巧みな話術…いろいろな要素がありますが、そんな理屈よりもともかく見て感じてもらうのが一番です。今回は、『GMカンファレンス2019』第1回「千葉大学からの3症例 (再現VTRあり)」を無料公開していますので、ぜひその「差」を感じてみてください。[6月10日まで第1回を無料公開] -
ショックを2分で鑑別!エコー番組が人気な理由 2021/04/25
CareNeTVで人気ある番組の1つに超音波診断装置、エコーを扱ったものがあります。その理由はなんとなくわかると思いますが、あえて言語化してみます。 まず動画なので、エコー像の動きを見られること。成書では、エコー像の瞬間瞬間を捉えた静止画しか供覧できません。 またエコーでは、画像を評価する前に、患者の適切な部位にプローブを上手に当て、画像を描出する技術も必要になります。動画ならば、エコーの名手の手元の微妙な動きを見せながら解説を加えることで、「いい絵」を映し出すコツを指南することができます。 似たように、医師が画像を映し出しながら病状を評価する検査に、消化管内視鏡がありますが、両者には決定的な違いがあります。エコーは患者への侵襲がほぼないので、誤解を恐れずにいえば、誰でも手軽にやってみることができる。内視鏡はそうはいかない。そのような意味でも、エコーは動画で学ぶことがより現実的な手技だと言えます。 2017年2月にリリースされた『救急エコー最速RUSH!』もそんな実践的なエコー番組です。RUSHは、ショック状態にある患者を9つのステップでクイックに診断するエコープロトコル。慣れれば2分で完了できると言います。瀬良誠先生の明解なレクチャーは、その全体像の理解を助ける教材として、多くの先生方から好評をいただきました。 「エコーを聴診器のように使う」。最近、先生方からよく聞く言葉です。エコーは、その性能が年を追うごとに向上し、身近になり、活用範囲が広がっています。それを上手に使いこなせるのが、医師として当たり前になってきているのかもしれません。 CareNeTVでも、これからもいろいろな形で実践的なエコーを学べる企画を考えていきたいと思っています。 -
心音は歌って身につける!Dr.水野メソッドで僕にもできました 2021/03/28
心音を聴き分ける方法として、「おとっさん・おっかさんメソッド」というのがあるそうです。IV音がある場合「おとっさん」、III音がある場合「おっかさん」のように聴こえるからですが、じゃあ、III音もIV音もある場合は、どう聴こえるの? その辺りをわかりやすく教えてくれるのが『Dr.水野のうたう♪心音レクチャー』の第3回。 III音もIV音も聴取できる四部調律は、馬の駆け足のように聴こえることからギャロップ音と言われますが、水野先生によると、心拍がゆっくりだと「おとっさん」のリズムで「ん」が強く聴こえる程度、心拍数が速くなると「タカタタン、タカタタン、タカタタン」、さらに速くなると「タンタタ、タンタタ、タンタタ、タンタタ」となっていく感じだそうです。 こうやって、文章で書くと何を言ってるのかよくわからないかもしれませんが、動画で音を実際に聴き、テンポを視覚的に見ると、よく理解できます。僕も聴き分けられるようになりましたよ。 月島のスタジオでの収録の様子を思い出します。夏でした。クールな三つ揃いに身を包んだ水野先生。照明を当てられて熱い中、何度も何度も「タカタタン、タカタタン、タカタタン」とか「タンタタ、タンタタ、タンタタ、タンタタ」とか熱弁している先生を脇で見ていて、「この人、ほとんど歌ってるやん」と思ったものです。 心音と臓器の異常や疾患を科学的に結びつけるのは知識として頭で覚えることですが、心音を聴き分けられる能力は、理屈ではなく、繰り返して体に身に付けさせるもの。カラオケのように何度も歌っていれば、自然に上手くなるのではないか? だから、このタイトルになりました。 もちろんただ聴き分けるだけでなく、それはどんな病態を示していて、臨床のアクションにどのように生かせばよいかも、別の回でしっかり解説しているのでご安心を。 ちなみに、この番組のオープニングに美しいジャジーなメロディーが流れるのですが、これは水野先生の友人のプロミュージシャンが作ったオリジナル曲。CareNeTV随一、音楽性が高い番組となっています。 -
英語が苦手な人に試してほしい3つのノウハウ 2021/02/27
英語って難しいですよねー。 いくら英会話の練習をしてもネイティブのように話せるようにはならない。もちろん、子どもの頃から毎日普通に英語をしゃべってきた人にとってはこれほど簡単なものはないわけですが…。 いきなり当たり前のことを書いてしまいましたが、上記のような認識の下、外国で一度も生活したことのない僕が英語を話せる、というか、英語で普通にコミュケーションできるようになったのには、3つのノウハウがあると思っています(英会話が苦手な人向けの話なので、得意な方は読む必要はありません)。 1つ目は、パターンを覚えること。典型的なのは旅行英会話ですが、「こういう場面では、こう言う」というのをある程度覚えておけば、その場面で英語が出てこないというのがなくなります。鉄板の王道ノウハウです。 医師が問診の際に使う言い回しもだいだい決まっています。 「今日はどうされました?」「頭痛はいつからですか?」「どのような痛みですか?ズキズキする感じですか? 締め付けられるような感じですか?」「ご家族で頭痛持ちの方はいらっしゃいますか?」 そんな診察室で使うナチュラルな英語表現を集めたのが『ワクワク!臨床英会話』。よくできた気軽な番組で、1つひとつのセッションは短いので、英語での診療にご興味がある方は試しにご覧ください。 僕の3つのノウハウの話に戻ります。 2つ目は、ある意味、上記の延長線上なのですが、自分が日本語でよく使う表現を英語で覚えておくことです。「イケてないよねー」みたいな合いの手、口癖の類いも含まれます。 英語で雑談していると、自分が言いたいことが瞬時に脳内で英語に変換されないことがあります。多くの方が経験すると思います。しかし、実は人間が日常でしゃべっている日本語はそんなに多様なわけではなく、その人ごとに結構パターン化されています。そのパターンを個別に思い出し、その英語表現をあらかじめ記憶しておくのです。 たとえば僕は、よく会話の中で「自分で言うのもなんだけど…」と言うのですが、今これを意味する英語が即座に口に出てこない人は多いのではないかと思います。会話では、英語のペーパー試験のように考えて文章を組み立てる時間はありません。だから単に、even if I do say so myself…という英語表現を丸暗記しておく。日頃から口ずさんでおく。そうした自分がよく使う表現がたくさんストックされていけば、英会話で詰まることが減っていきます。 3つ目は、ノウハウというよりは発想の転換です。もともと僕らは日本語でも100%通じ合う会話なんてできていません。言わんや英語をや、です。その開き直りがあれば、英会話なんてどうということはありません。 意味がわからなかったら、聞き返す。意味が伝わってないと思ったら、違った単語、表現で再度説明する。という日本語でやっていることを英語でやればよいだけです。その時に必要な表現はノウハウ2の原則に従い、できるだけストックしておけばいいのです。 コラムの趣旨からやや外れてしまいましたが、英語に苦手意識がある方の参考になるといいのですが。とりあえず『ワクワク!臨床英会話』を見れば、臨床英会話に関しては、ノウハウ1をほぼクリアできると思います。 -
双極性障害には「リッチにバカラ」 2021/01/23
双極性障害の患者さんの病態はどのようなものだと思っていますか。躁状態とうつ状態が交互に現れる。そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。 教科書的には確かにそうですが、実際の双極性障害は、一般的に抑うつ期間の方がはるかに長いことが多いとされています。そして患者さんは躁では困らず、抑うつで困るので、「うつ病」と間違われているケースがたくさんあります。 では、双極性障害の人は、躁状態のときはどんな様子で、うつ状態のときはどんな風にしゃべるのかご存じでしょうか?一度見てみたければ、『Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療』をご覧ください。 実際の双極性障害の患者が出演しているわけではありません。たくさんの患者を診てきた、筑波大学の松崎朝樹先生が双極性障害患者になりきり、その特徴を再現しています。その役者ぶりはなかなかの見ものです。 双極性障害をうつ病と誤診することの最大の問題は、両疾患では治療薬が違うことにあります。双極性障害でも抑うつ症状が目立つならば、抗うつ薬が効くのではと思いがちですが、決してそうではないと松崎先生は断じます。 うつ病には抗うつ薬、双極性障害には気分安定薬。治療薬が違うからこそ、両者の鑑別が重要になるのです。 代表的な気分安定薬は、炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンの4つ。松崎先生は覚えやすいように学生には「安定したらリッチにバカラ」と教えているそうです。そんな語呂合わせも楽しい、松崎先生ならではの名編です。 -
「論文はどこから読むべきか」驚きのDr.香坂ルールとは? 2020/12/20
「論文はどこから読めばいいか」。そう聞かれたら、多くの医師は「抄録」(Abstract)と答えるのではないでしょうか。論文の最初にあるし、それで論文の概要がわかるわけなので。しかし、香坂俊先生の考えは違います。では、どこから? そんなアカデミック・ドクターになるための香坂流の独特のアプローチを濃縮したのが『Dr.香坂のアカデミック・パスポート』です。 この番組は、CareNeTVのなかではやや異色のプログラムだといえます。CareNeTVの番組の多くは、循環器なら循環器、X線画像読影ならX線画像読影というように、実臨床で必要な医学知識や診療スキルそのものを身につけるためのものです。それに対して、『Dr.香坂のアカデミック・パスポート』は、いわば、そのような知識・スキルを身につけていくうえでの考え方を教えています。 よく、医師の役割は、臨床・研究・教育が3本柱であると言われます。ともすれば臨床医は、目の前の患者を救う「臨床」に集中しがちですが、同時に「研究」もできる、研究を臨床に生かせて、臨床から研究を生み出せるのが、本来の“いい医者”だというのが、香坂先生の持論です。そのような医師を「アカデミック・ドクター」と名付け、そこに至る道の「パスポート」という意味合いで、番組名が決まりました。 冒頭の問いに対する香坂先生の答えは「考察」(Discussion)の冒頭の部分。なぜなら「そこに筆者の思いがいちばん込められているから」だそうです。論文はそもそも研究者が研究者のために書いたものであり、臨床家として実臨床に役立つメッセージを手っ取り早くつかみたいなら、そういう読み方もあると香坂先生は教えます。 ほかにも、アカデミック・ドクターになるための香坂先生らしいポリシー、ノウハウが詰まっている本番組、ぜひ一度ご覧ください。とくに、若い先生にオススメです。 CareNeTVでは、新しい学びの場として『CareNeTVスクール』を立ち上げました。香坂先生からZoomを利用して継続的に直接指導を受けられるコースの受講者を現在募集中ですので、ご興味がある方はこちらもチェックしてみてください。Dr.香坂の循環器エッセンシャル(全8回コース)[12月26日まで全話無料公開] -
なぜ左右対称で大きさがバラバラなのか?皮疹から病気を推理する楽しさを知る 2020/11/28
水曜午後9時からNHK BSプレミアムで放映されている『刑事コロンボ』。僕は毎週欠かさず録画して観ています。大半の回はすでに何度か観ているし、結末を覚えていることもある。でも、必ず最後まで楽しめる。その“感じ”はご理解いただけるでしょうし、そうした“コロンボ好き”が山ほどいるからこそ、20年以上前の番組が繰り返し再放送されるわけです。 臨床医学教育番組で、このような永遠に変わらない価値を持つコンテンツを作るのは至難の業です。それは言うまでもなく、医学は進歩を続けており、10年もすれば、かつての治療法がまったく行われなくなっていたり、より精度が高い検査機器が開発されていたり、新しい疾患が発見されているといったこともしばしばあるからです。 そんな中で、僕がCareNeTVの番組群で「不変の価値」を感じる数少ないものの1つが、『平本式 皮膚科虎の巻』です。平本力先生が、内科医向けに、難解な皮膚科診療の必要十分を指南するプログラムですが、看板に偽りなく、そのアプローチがオリジナリティに富んでいて、哲学すら感じます。2004年リリースなので、16年前の作品ですが、今でも楽しみながら十分な学びを得ることができます。 何が凄いのかは番組を観ていただくのが早いですが、文章で説明を試みるなら、それは、皮疹の特徴と診断名を機械的に結び付けて覚えさせるのではなく、その皮疹はなぜそのように発現したのか、論理的に突き詰めていく面白さにあります。 そのカギになるコンセプトが「因・機・疹、遠・近・考」の考え方。すなわち、その皮疹が体表にそのような形状で発現したのは、何が原因で(ウイルスなのか?器械刺激なのか?炎症なのか?等)、どのような機序だったと推理できるか?そのために、まず遠くから体表を全体的に見て分布を把握し、次に近づいて仔細に皮疹の特徴(大きさ、色、形、境界等)を観察する。そして、結論が出るまで繰り返し考える。さながら、刑事コロンボの捜査のようです。 もちろん、「左右対称の発疹は内因性の可能性が高く、まず中毒疹を考える」といったわかりやすいtipsもたくさんちりばめられていますが、それが、そもそもなぜそうなるのか?から解き明かしてくれるので、腹に落ちて、しっかり頭に残るのです。 で、オープンニングがなぜか時代劇。その演出に古さを感じますが、その古ささえも心地よく感じる、観て損のない名作です。 -
眼も診られる内科医に必要な指先のテクニック 2020/10/25
マイナー科という言い方があります。定義は曖昧ですが、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、精神科など内科・外科以外の診療科を包含して用いられるのが通例で、その源流は、どうやら医師国家試験対策での分類にあるようです。 自分の科が「マイナー」だと言われるのはあまり気分がよくないだろうと思い、普段は使いませんが(と言いながら今書いていますが)、仕事上、頭の中でそういう括り方をすることはよくあります。いわゆるマイナー科は、専門特化されているが故にメディアとしてコンテンツ企画を成立させにくい領域だからです。 しかしながら、CareNeTVにもマイナー科と言われる科の番組もあります。 『Dr.加藤の「これだけ眼科」』はその代表格。加藤浩晃先生が「眼科医ではない先生にも眼科のこれだけは知っておいてほしい」というところだけをまとめており、そのコンセプトを端的に表現したタイトルも個人的に気に入っています。 本編をご覧いただければ、内科医が知っておくべき、行うべき眼科の必要十分が押さえられるはずですが、全7話のうち1つだけというならば、最終話の「眼科コモンディジーズはこれだけ」をお勧めします。 加藤先生によると、非眼科医が出合う眼科疾患の80%は前眼部疾患。その診察に、フルオレセイン染色を活用し、上眼瞼の翻転ができると、幅がぐっと広がります。 上眼瞼の翻転とは、眼科医が上瞼を指でクルっとひっくり返すアレですが、慣れないと簡単ではありません。初心者は、綿棒を使うと上手くできるそうで、加藤先生は研修医に最初はこのやり方を教えているとのこと。その具体的な手順ももちろん番組内で紹介しています。 「これだけ科」は残念ながらまだ眼科だけです。この記事を読んで「うちの科でもできるかも?」と思った他科の先生がいらっしゃったら、ぜひご連絡ください。番組化を検討します。 -
全期間1位!医学コンテンツの常識を変えた“イワケン”スタイル 2020/09/26
どんな情報サイトでもランキングは人気があります。そのサイトで面白いコンテンツを探そうと思ったら、ランキングを見るのが一番手っ取り早いし、そのようにして、多くの人がランキング上位のコンテンツを見るので、そのコンテンツのページビューはさらに上がり、評価が高まっていきます。 CareNeTVには、月間、年間の視聴ランキングだけでなく、サイト開設からの全期間ランキングというものがあります。ニュースサイトではなく、医学教育動画サイトだからこそ、意義が大きいランキングだと思いますが、現在その1位は、岩田健太郎先生の『Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND』です。 岩田先生についてはもはや説明不要でしょうが、同様に多くのヒット医学書をものしている倉原優先生が、コンテンツクリエイターとしての岩田先生について、CareNet.comの対談の中でこう評しています。僕もまったくその通りだと思うので、引用させていただきます。 「岩田先生は、『抗菌薬の考え方、使い方』という本で、医学書と小説を足した、寝転んで読めるような“読み物としての医学書”というジャンルを作り出した。これが、岩田先生は怪物級にスゴイと思う理由です。読み物としての医学書というジャンルができたことで、日本の医学書出版業界のトレンド―文化ができたんだと思います。」(CareNet.com「Dr.倉原の俺の本棚」より) CareNeTVの番組でも、岩田先生のレクチャーには、ほかの大半の先生方と違う大きな特徴があります。それは、スライドを使わないことです。番組のテーマに沿って大きな枠組みを事前に決めておいて、あとはアドリブというか即興で話します。それで内容がしっかり伝わるし、聴く者を飽きさないどころか、イキイキとしたライブ感で引きずり込む。この“イワケン”スタイルは、医学書よりもマネするのは難しいでしょう。 件の『Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND』は、まさに“イワケン”スタイルを堪能できる作品。2012年の制作なので薬の適応などやや古くなっているところはありますが、第3回の「薬理学を武器にせよ」など、感染症治療でもっとも大事な原理原則が圧倒的な熱量とともに頭に入ってきます。 見れば、感染症を学べるだけでなく、人に何かをうまく伝えるヒントも見つかるかもしれませんよ。 -
暑すぎる夏に、愛され続けるCareNeTVの吉本新喜劇 2020/08/28
最近テレビでバラエティ番組などを見ていると、「お笑い第七世代」という言葉をよく耳にします。ウィキペディアによると、2010年以降にデビューした若手お笑い芸人を指す総称だそうですが、「じゃあ、第三世代って誰あたりなんだろう?」「ウッチャンナンチャンは第何世代?」とか、どうでもいいことをいろいろ考えてしまいますが、お笑いのスタイルが時代とともに変容しているのは、誰もが肌で感じるところです。 一方で、変わらないお笑いの型もあります。COVID-19で不幸にも命を落とした志村けんさんらが作り上げたドリフターズのコントは、 今の子どもたちが見ても大笑いするそうです。時代を超えた普遍性があるということでしょう。そんな変わらないお笑いの究極が今なお人気の吉本新喜劇ですよね。 CareNeTVにも、吉本新喜劇のような番組があります。と言えば、みなさん思い浮かべるものは一つしかないはず。そう、林寛之先生の『Dr.林の笑劇的救急問答』です。 僕はこの番組の生い立ちを知りません。僕がケアネットに入社したときには、それはすでに当たり前にあったからです。しかし、ケアネットに入るずっと前から、その存在は知っていました。ケアネットと言えば、林先生。林先生と言えば、ケアネット。そんな感じ。今でも、初対面の先生にケアネットの話をすると、「ああー、あの林先生のね」と返ってくることしばしば。毎月行っている視聴者の満足度調査でも、常に圧倒的な支持を得ています。 僕が『Dr.林の笑劇的救急問答』を吉本新喜劇になぞられる理由は言うまでもありません。なにせ「笑劇的」です。言葉の印象そのままの昭和な感じの寸劇。それを学術的な臨床講義のアイスブレークにする構成。そのスタイルが確立され、続いています。 この寸劇の脚本は、すべて林先生の自作。出演者は福井大学・福井県立病院の若手医師や研修医の方々ですが、そのキャスティングも林先生自ら行っています。臨床医としてはもちろん、脚本家、プロデューサーとしての才能にも脱帽です。 9月から最新Season16がスタートするこのシリーズですが、記念すべきSeason1では、熱中症を取り上げています。ただでさえ暑いのに日本中がマスクに覆われる2020年夏に打ってつけではありませんか?15年前の番組なのでガイドラインが変わっている部分もありますが、本質的な考え方は同じです。何より吉本新喜劇ばりのベタなオチ。僕は好きです。 -
「京都にスゴい医者がいるらしい」日本中の内科医が唸ったEBM診断学 2020/07/26
「京都の洛和会丸太町病院の上田先生というのはスゴいらしいよ」 僕は職業柄、常に優れた臨床医探しのアンテナを張るようにしています。今から7、8年前でしょうか?その頃、とくにCareNeTVの新しいスター講師を探していて、ことあるごとに、いろいろな先生方に「どこかに、いい先生、いないですかねー?」と尋ねていましたが、そんな中で上田剛士先生の噂を聞きつけました。 ほぼ時を同じくして、医学書院から「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」が発刊。今や内科医の定番とも言える同書ですが、発刊当時は、その異次元のクオリティーに、日本中の“心ある内科医”が驚愕したものです。 今Amazonのレビューをのぞいても、「今更改めて言うほどでもないが・・・この本は神です」「成書の知識が、どんどん繋がって、現場で役立つ知識に変わっていくよう」といった絶賛コメントが並んでいます。 ともかく一度お目にかかりたいと、なんとかアポイントを取りつけ、暑い夏の京都を訪れたのが2014年。 面会前、僕が頭の中に描いていたのが、当時テレビで流行っていた「ドクターG」をいわば普遍化した番組。ドクターGでは、実際の症例を用いて、さまざまな症状から、1つの診断という答えを絞り込んでいくわけですが、僕のアイデアは、外来でよく遭遇する症候から、およそ考えうる疾患を網羅できないか、というものでした。 「外来で出合う8割の症候をカバーしたいと考えているんですが…」 初対面の僕のざっくりとしたお願いに上田先生は、少し間を置くと、「できると思いますよ」と、さらりとおっしゃいました。あの冷徹な趣きで。 それが結実したのが『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断』です。3シリーズで、主要20症候をカバー。とことんエビデンスに立脚した上田先生ならではの精緻なアプローチで、今やCareNeTV屈指の人気番組になりました。 番組タイトルも当時のテレビ番組「たけしの本当は怖い家庭の医学」をもじったものです。僕が案出したわけではなく、番組にも出演している若い先生の「『たけしの本当にスゴい臨床医学』でいいんじゃないっすか?」という収録の合間の何気ない一言を拝借しました。 ぜひご覧ください。本当にスゴいですから。『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断』『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断2』『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断3』