数多あるCareNeTV番組の中で、長く支持を集め続ける作品には、それなりの理由がある。ヒット作の見所を、講師の先生の素顔、収録秘話を含め、ケアネット編集長の風間がご案内します。
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英語プレゼンが確実にワンランク上がるTips満載 2021/10/28
音程を1オクターブ下げてみよう階段を下りる調子でしゃべってみよう一気にしゃべってみよう思い切って音をつなげてみよう思い切って音を脱落させてみようこれが何のためのノウハウかわかりますか?(今文章を読んでいる方は、タイトルを見てこの文章を読み始めているでしょうから、クイズになっていないのですが…)『学会で光る!英語プレゼン』講師の佐藤雅昭先生による、英語らしく聞こえる5つのsecretsです。英語というのは、日本に住む日本人にとってマスターするのがとても難しいものです。インターネットでこれだけ世界がつながっても、英会話スクールや英語教材が大きな産業であり続けているのがその証左でしょう。かくいう僕も、英語が流暢に話せるわけではありませんが、この『学会で光る!英語プレゼン』を見て、だいぶうまくなった気がします。ともかく、佐藤先生は英語が上手なだけでなく、とても頭がよく論理的な方です。日本人が英語をうまく話せない、怖気づいてしまう原因を分析し、それを解決する手段を「論理的に」「科学的に」教えてくれます。番組では、英語のプレゼンテーションの要素を、スライドのまとめ方、質疑応答の仕方、英語そのもののしゃべり方など、細かく分解し、それぞれに起こりがちな問題を解決する方法を提示しているのですが、いちいち腹に落ちます。冒頭の5つのsecretsもその一例ですが、やってみると、案外そんな気がしてくるので、ぜひお試しください。番組をご覧いただけば、その理由もわかります。なかなか面白いですよ。また、今回この番組を見直して改めて思ったのが「英語も言葉である」という当たり前のことです。つまり、先生が話していることは、日本語に置き換えてもそのまま通じるノウハウが多いのです。真剣に見て理解して実践すれば、英語プレゼンテーション、さらに敷衍すると、日々の言語コミュニケーションの上達にもつながると思います。番組で紹介していることをすべて実行できなくても、通して見れば、1つや2つは英語力がワンランクアップする自分にあったTipsがあるはずです。派手さはないですが、見て損のない、とても実用的な番組です。 -
透析のバイトに出る前にこれだけはさらってほしい 2021/09/25
「医師が自腹を切ってまで勉強したいことってどんなことだろう?」CareNeTVの新しい番組企画を検討するときは、そのことばかり、繰り返し繰り返し考えます。 自分の専門分野こそがもっとも勉強したいことだろうし、すべきことでしょうが、それは医師の本来業務に含まれており、みなさん日々熱心に学んでいるでしょう。最新の情報やより深い知見も学会などから得ているはずで、CareNeTVの出番は少ない気がします。 「透析のバイトって、みんな不安だと思うんですよねー」 ある若手の先生と雑談で、上述のようなことを話していると、こんな言葉が出てきました。 透析医療は、言うまでもなく、腎臓内科あるいは泌尿器科の専門領域です。日本透析医学会は専門医制度も設けており、現在その数は約6000人。しかし、34万人に達しいまだ増加を続ける透析患者を専門医だけが診ていくことは不可能です。 ただでさえ透析はひとたびその状態になると一生続けなければならない医療です。多くの医療者がかかわる必要があり、慢性期の維持透析に関しては、他科の医師が非常勤で対応しているケースも多いのが実情。 企画の誕生です。 「透析にあまり詳しくない先生がバイトする際、専門医の視点から『最低限ここまでは知っておいてほしい』『ここは気を付けてほしい』という内容をレクチャーしてくれませんか」。聖マリアンナ医科大学の櫻田勉先生にお願いすると、快く応じてくれました。 2017年にリリースした『透析患者を診る前に1時間で詰め込む 透析管理の基礎知識』では、血液透析のシステムと原理という基本中の基本から、透析処方の実際、検査値の見方、トラブルへの対応といった実臨床に即した、透析医療に必要不可欠な知識が要領よくまとめられています。 正直、透析管理は多くの医師にとって「自腹を切ってまで勉強したいこと」ではないかもしれません。しかしCareNeTVにわかりやすい講義があれば、バイトに行く前やちょっと気になったときに、さらっと学べる。自信を持って診療に臨める。 医師の学びのニーズは至るところにあるはずです。それを上手にお手伝いすることで、医療の質向上に微力ながら貢献できればと考えています。 -
「薬を切れる医者がいい医者」時代の「切る」技術 2021/08/28
「処方カスケードからポリファーマシーとなり、減薬が必要です」 今でこそ当たり前な言い回しですが、最初に言われ始めたころ(7、8年前でしょうか?)、とても不思議な感じがしたのを覚えています。 そもそも「処方カスケード」って何?と最初思いました。処方カスケードとは、患者が服用している薬による有害事象を医師が新たな病状と認識し、それに対して新たな処方を行うことです。当然、薬の過剰な多剤併用状態=ポリファーマシーの原因になります。 それが医療現場で普通に起こっていると知ったときは、医師の処方って、そんなにいい加減に行われてるの?と正直感じました。意味がなかったり、不要だったりするのであれば、中止すればいいだけじゃないの?と。 雑談でそのことを何人かの医師に率直に話すと、だいたいこんな返事が返ってきました。 「前医が処方してずっと飲み続けている薬は、処方理由がわからなくて、なかなか切れないものなんだよ。患者も不安がるしね」 「医者は薬を使ってどう治すか、と考えるのが当たり前で、薬をどう減らすかとはまず考えないよ」 なるほど、話はそんなに単純ではないようです。 2016年11月にリリースした『Dr.キタカズの解決!ポリファーマシー』は、ポリファーマシー状態にある処方薬の切り方を実践的に指南した番組。同年4月リリースの関口健二先生の『エビデンスベースド!高齢者向け“最適”処方術』は、いわばそれに理論的な裏付けを与える内容です。当時流行っていたのでしょうね。 ひと昔前までは、患者さんは、薬をたくさん出してくれる先生を好むとよく言われました。まだその傾向はあるとは思いますが、医学的には、その患者さんに最小限の最適処方ができる医師が「いい医師」であるのは論を待ちません。そして、時代は確実にそちらに進んでいます。 まだ、その視点をあまり持ち合わせていない先生がもしいらしたら、番組をちょっとのぞいてみてください。 -
診断+戦略、平凡な2つの単語が常識を変えた! 2021/07/29
診断戦略エッセンス。これは医学書院から発行されている、志水太郎先生の同名の著書のポイントを映像化した作品です。この企画を思いついたのは僕ですが、この本を最初に知ったとき、失礼ながら凡庸なタイトルだと感じたのを覚えています。後に、凡庸なのは僕の方だったと気づくわけですが…。 志水先生は僕が親しくさせていただいている医師の1人です。最初に知ったのは『診断戦略』の前にものした『愛され指導医になろうぜ』(日本医事新報社)という本。この本は、逆に「医学書にしては面白いタイトルだなー」と思いました。だいたい、自分のことを愛され指導医とか言っちゃう?みたいな。 この本が若手医師に評判がよいと知り、リーダーシップについて話してもらうために、志水先生に初めてコンタクトをとりました。その後、親しい共通の知り合いがいたこともあり、食事などもご一緒するようになったのです。 『診断戦略』については冒頭のような第一印象だったので、あまり興味を持っていませんでした。しかし志水先生と話しているうちに、先生がこの本で何をしたいのかわかってきました。何を書きたいか?ではなく、何をしたいか?です。 医師が臨床でよく使う言い回しに「治療戦略」というのがあります。目の前にいる患者を治すために、どんな武器を使って、どのように攻めていくか、戦略を立てるのは臨床医の常識です。一方で、診断に戦略を立てているでしょうか? 経験と勘で行われている、と言っては語弊がありますが、少なくとも戦略が治療のように体系化され、言語化されていない。 志水先生は、診断という行為も治療のように戦略をもってなされるべきだと考え、それを同書で提言した。つまり、医師の常識、従来の行動そのものを変えようとしたのです。 診断、戦略という単語は平凡でコモンなワードです。しかし、その2つの単語をくっつけるだけで新しい世界観を提示している。大上段に構えた普遍的な概念だからこそシンプルに。実によくできたタイトルだ!と後で気づきました。一方で「愛され指導医」のような奇抜でキャッチーなワーディングもできる志水先生は、コピーライターとしてのセンスも一流なのです。 実際、同書のお陰もあり、診断を科学的に戦略的に行おうという動きは着実に広がっています。本の宣伝のようになってしまいましたが、エッセンスは本番組でしっかりわかるので、まだ「診断戦略」をご存じない方は、どのようなものかぜひご覧になってみてください。 -
「内科専門医改革」が生み出した臨床教育番組のニュースタンダード 2021/06/27
来月7月4日に第1回の日本内科学会の内科専門医試験が実施されます。と聞くと、内科医以外の先生は「えっ、内科の専門医ってこれまでなかったの?」と思うかもしれません。そうです、なかったのです。あったのは「認定内科医」で、大まかにいうと、これが今回から資格のレベルを含めて「専門医」に制度変更されます。 そして2ヵ月後の9月12日には、総合内科専門医試験が行われます。これも日本内科学会による資格試験で、こちらは49回目。しかし、この試験、2013年までは1回の受験者が300~500人の規模でした。ところが、2014年以降、突然その10倍、毎年5,000人以上の内科医が受けることになります。 これらは、すべて日本内科学会の「内科専門医改革」によってもたらされたものです。改革の目的、詳細は学会ホームページに詳しいですが、認定内科医から専門医に数年かけて制度を移行していく過程で、結果として多くの内科系の先生が対応を迫られたわけです。 「総合内科専門医試験で苦労している先生が多いみたいですよー」 私がある方からこんな話を聞いたのは、2014年の終わりだったと思います。それから上述のような状況を理解し、2015年にCareNeTVで試験対策の番組を作ることを決めました。臨床で忙しい先生に効率的に合格できる知識を身につけてもらう。当初手探りで、いろいろな先生や関係者にヒアリングし、協力を得て、なんとかリリースにこぎ着けると、その反応の良さからニーズの大きさを実感しました。また、受験者以外の先生にも、内科全般の知識の再確認、アップデートに役立つと高い評価をいただいています。 CareNeTVではこれまでいくつかの内科系試験対策番組を制作し、いまや看板の一つになっていますが、何より大きかったのは長門直先生との出会いです。当時勤務されていた久留米の聖マリア病院で、認定内科医試験の内輪の勉強会を開いて後輩に教えているという噂を聞きつけ、面会に行きました。お話を聞いて、当時の認定内科医試験、総合内科専門医試験の出題傾向、相違を調べ尽くしており、驚愕したのを覚えています。しかも、通常の診療をしながらですから、なおさらです。 その長門先生による最初の番組が『認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック』。先生によると、認定内科医試験と総合内科専門医試験には共通する部分が多く、問われる知識の「深さ」に差があるそうです。よって、認定内科医試験レベルの知識をおさらいすることは、総合内科専門医試験対策のベースとなるわけです。実際、この番組は今でも総合内科専門医試験対策としても活用いただいているようです。ただし、5年前に制作したものなので、そこはご留意ください。 -
見ればわかる!生坂カンファレンスの圧倒的な「僅差」 2021/05/27
優れたコンテンツと並みのコンテンツの差は、それ自体はごくわずかしかない。しかし、そのごくごくわずかな差が、ページビュー、視聴数という「結果」においては何倍、何十倍という圧倒的な差になる。ただ、そのわずかな差を生み出すのが、途轍もなく難しい。 僕は、インターネットの黎明期から、医師が読みたい記事、見たいコンテンツはどんなものか考え抜いて、作って配信し続けているわけですが、いつもそのことを感じています。 そのわずかな差はときに言語化できません。でも、多くは見れば誰にでもわかるものです。だからこそ、人はそちらに引き寄せられていくわけですが。 前置きが長くなりましたが、僕にとって、そんなわずかだけど圧倒的な差があるコンテンツの代表格が千葉大学総合診療科の生坂政臣先生の『GMカンファレンス』です。 ご存じの方も多いと思いますが、生坂先生のGMカンファレンスは、NHKの人気番組だったドクターGの原型になっています。つまり、症例の情報を少しずつ出しながら、回答者が病名を予測し、最後に謎解きするクイズ形式です。エンタテインメント性もあり、今では、この形態のカンファレンスは医師同士の勉強会などでもよく行われています。 僕は、この“ドクターG型”ともいうべき症例カンファレンスを何度も見たことがありますが、生坂先生がナビゲートするのとそれ以外の先生では明確に差があります。もちろん、それ以外の先生もすばらしい指導医であり臨床医なのです。ただ、このスタイルの症例検討に関していえば、見比べれば、生坂先生が抜きん出ているのがわかります。わずかな差なのでしょうが、決して埋まらない差であり、その差を生み出せるのは、生坂先生だからこそなのです。 何がその差を生み出すのか?圧倒的な知識量、当意即妙なコメントを生む頭の切れ、巧みな話術…いろいろな要素がありますが、そんな理屈よりもともかく見て感じてもらうのが一番です。今回は、『GMカンファレンス2019』第1回「千葉大学からの3症例 (再現VTRあり)」を無料公開していますので、ぜひその「差」を感じてみてください。[6月10日まで第1回を無料公開] -
ショックを2分で鑑別!エコー番組が人気な理由 2021/04/25
CareNeTVで人気ある番組の1つに超音波診断装置、エコーを扱ったものがあります。その理由はなんとなくわかると思いますが、あえて言語化してみます。 まず動画なので、エコー像の動きを見られること。成書では、エコー像の瞬間瞬間を捉えた静止画しか供覧できません。 またエコーでは、画像を評価する前に、患者の適切な部位にプローブを上手に当て、画像を描出する技術も必要になります。動画ならば、エコーの名手の手元の微妙な動きを見せながら解説を加えることで、「いい絵」を映し出すコツを指南することができます。 似たように、医師が画像を映し出しながら病状を評価する検査に、消化管内視鏡がありますが、両者には決定的な違いがあります。エコーは患者への侵襲がほぼないので、誤解を恐れずにいえば、誰でも手軽にやってみることができる。内視鏡はそうはいかない。そのような意味でも、エコーは動画で学ぶことがより現実的な手技だと言えます。 2017年2月にリリースされた『救急エコー最速RUSH!』もそんな実践的なエコー番組です。RUSHは、ショック状態にある患者を9つのステップでクイックに診断するエコープロトコル。慣れれば2分で完了できると言います。瀬良誠先生の明解なレクチャーは、その全体像の理解を助ける教材として、多くの先生方から好評をいただきました。 「エコーを聴診器のように使う」。最近、先生方からよく聞く言葉です。エコーは、その性能が年を追うごとに向上し、身近になり、活用範囲が広がっています。それを上手に使いこなせるのが、医師として当たり前になってきているのかもしれません。 CareNeTVでも、これからもいろいろな形で実践的なエコーを学べる企画を考えていきたいと思っています。 -
心音は歌って身につける!Dr.水野メソッドで僕にもできました 2021/03/28
心音を聴き分ける方法として、「おとっさん・おっかさんメソッド」というのがあるそうです。IV音がある場合「おとっさん」、III音がある場合「おっかさん」のように聴こえるからですが、じゃあ、III音もIV音もある場合は、どう聴こえるの? その辺りをわかりやすく教えてくれるのが『Dr.水野のうたう♪心音レクチャー』の第3回。 III音もIV音も聴取できる四部調律は、馬の駆け足のように聴こえることからギャロップ音と言われますが、水野先生によると、心拍がゆっくりだと「おとっさん」のリズムで「ん」が強く聴こえる程度、心拍数が速くなると「タカタタン、タカタタン、タカタタン」、さらに速くなると「タンタタ、タンタタ、タンタタ、タンタタ」となっていく感じだそうです。 こうやって、文章で書くと何を言ってるのかよくわからないかもしれませんが、動画で音を実際に聴き、テンポを視覚的に見ると、よく理解できます。僕も聴き分けられるようになりましたよ。 月島のスタジオでの収録の様子を思い出します。夏でした。クールな三つ揃いに身を包んだ水野先生。照明を当てられて熱い中、何度も何度も「タカタタン、タカタタン、タカタタン」とか「タンタタ、タンタタ、タンタタ、タンタタ」とか熱弁している先生を脇で見ていて、「この人、ほとんど歌ってるやん」と思ったものです。 心音と臓器の異常や疾患を科学的に結びつけるのは知識として頭で覚えることですが、心音を聴き分けられる能力は、理屈ではなく、繰り返して体に身に付けさせるもの。カラオケのように何度も歌っていれば、自然に上手くなるのではないか? だから、このタイトルになりました。 もちろんただ聴き分けるだけでなく、それはどんな病態を示していて、臨床のアクションにどのように生かせばよいかも、別の回でしっかり解説しているのでご安心を。 ちなみに、この番組のオープニングに美しいジャジーなメロディーが流れるのですが、これは水野先生の友人のプロミュージシャンが作ったオリジナル曲。CareNeTV随一、音楽性が高い番組となっています。 -
英語が苦手な人に試してほしい3つのノウハウ 2021/02/27
英語って難しいですよねー。 いくら英会話の練習をしてもネイティブのように話せるようにはならない。もちろん、子どもの頃から毎日普通に英語をしゃべってきた人にとってはこれほど簡単なものはないわけですが…。 いきなり当たり前のことを書いてしまいましたが、上記のような認識の下、外国で一度も生活したことのない僕が英語を話せる、というか、英語で普通にコミュケーションできるようになったのには、3つのノウハウがあると思っています(英会話が苦手な人向けの話なので、得意な方は読む必要はありません)。 1つ目は、パターンを覚えること。典型的なのは旅行英会話ですが、「こういう場面では、こう言う」というのをある程度覚えておけば、その場面で英語が出てこないというのがなくなります。鉄板の王道ノウハウです。 医師が問診の際に使う言い回しもだいだい決まっています。 「今日はどうされました?」「頭痛はいつからですか?」「どのような痛みですか?ズキズキする感じですか? 締め付けられるような感じですか?」「ご家族で頭痛持ちの方はいらっしゃいますか?」 そんな診察室で使うナチュラルな英語表現を集めたのが『ワクワク!臨床英会話』。よくできた気軽な番組で、1つひとつのセッションは短いので、英語での診療にご興味がある方は試しにご覧ください。 僕の3つのノウハウの話に戻ります。 2つ目は、ある意味、上記の延長線上なのですが、自分が日本語でよく使う表現を英語で覚えておくことです。「イケてないよねー」みたいな合いの手、口癖の類いも含まれます。 英語で雑談していると、自分が言いたいことが瞬時に脳内で英語に変換されないことがあります。多くの方が経験すると思います。しかし、実は人間が日常でしゃべっている日本語はそんなに多様なわけではなく、その人ごとに結構パターン化されています。そのパターンを個別に思い出し、その英語表現をあらかじめ記憶しておくのです。 たとえば僕は、よく会話の中で「自分で言うのもなんだけど…」と言うのですが、今これを意味する英語が即座に口に出てこない人は多いのではないかと思います。会話では、英語のペーパー試験のように考えて文章を組み立てる時間はありません。だから単に、even if I do say so myself…という英語表現を丸暗記しておく。日頃から口ずさんでおく。そうした自分がよく使う表現がたくさんストックされていけば、英会話で詰まることが減っていきます。 3つ目は、ノウハウというよりは発想の転換です。もともと僕らは日本語でも100%通じ合う会話なんてできていません。言わんや英語をや、です。その開き直りがあれば、英会話なんてどうということはありません。 意味がわからなかったら、聞き返す。意味が伝わってないと思ったら、違った単語、表現で再度説明する。という日本語でやっていることを英語でやればよいだけです。その時に必要な表現はノウハウ2の原則に従い、できるだけストックしておけばいいのです。 コラムの趣旨からやや外れてしまいましたが、英語に苦手意識がある方の参考になるといいのですが。とりあえず『ワクワク!臨床英会話』を見れば、臨床英会話に関しては、ノウハウ1をほぼクリアできると思います。 -
双極性障害には「リッチにバカラ」 2021/01/23
双極性障害の患者さんの病態はどのようなものだと思っていますか。躁状態とうつ状態が交互に現れる。そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。 教科書的には確かにそうですが、実際の双極性障害は、一般的に抑うつ期間の方がはるかに長いことが多いとされています。そして患者さんは躁では困らず、抑うつで困るので、「うつ病」と間違われているケースがたくさんあります。 では、双極性障害の人は、躁状態のときはどんな様子で、うつ状態のときはどんな風にしゃべるのかご存じでしょうか?一度見てみたければ、『Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療』をご覧ください。 実際の双極性障害の患者が出演しているわけではありません。たくさんの患者を診てきた、筑波大学の松崎朝樹先生が双極性障害患者になりきり、その特徴を再現しています。その役者ぶりはなかなかの見ものです。 双極性障害をうつ病と誤診することの最大の問題は、両疾患では治療薬が違うことにあります。双極性障害でも抑うつ症状が目立つならば、抗うつ薬が効くのではと思いがちですが、決してそうではないと松崎先生は断じます。 うつ病には抗うつ薬、双極性障害には気分安定薬。治療薬が違うからこそ、両者の鑑別が重要になるのです。 代表的な気分安定薬は、炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンの4つ。松崎先生は覚えやすいように学生には「安定したらリッチにバカラ」と教えているそうです。そんな語呂合わせも楽しい、松崎先生ならではの名編です。 -
「論文はどこから読むべきか」驚きのDr.香坂ルールとは? 2020/12/20
「論文はどこから読めばいいか」。そう聞かれたら、多くの医師は「抄録」(Abstract)と答えるのではないでしょうか。論文の最初にあるし、それで論文の概要がわかるわけなので。しかし、香坂俊先生の考えは違います。では、どこから? そんなアカデミック・ドクターになるための香坂流の独特のアプローチを濃縮したのが『Dr.香坂のアカデミック・パスポート』です。 この番組は、CareNeTVのなかではやや異色のプログラムだといえます。CareNeTVの番組の多くは、循環器なら循環器、X線画像読影ならX線画像読影というように、実臨床で必要な医学知識や診療スキルそのものを身につけるためのものです。それに対して、『Dr.香坂のアカデミック・パスポート』は、いわば、そのような知識・スキルを身につけていくうえでの考え方を教えています。 よく、医師の役割は、臨床・研究・教育が3本柱であると言われます。ともすれば臨床医は、目の前の患者を救う「臨床」に集中しがちですが、同時に「研究」もできる、研究を臨床に生かせて、臨床から研究を生み出せるのが、本来の“いい医者”だというのが、香坂先生の持論です。そのような医師を「アカデミック・ドクター」と名付け、そこに至る道の「パスポート」という意味合いで、番組名が決まりました。 冒頭の問いに対する香坂先生の答えは「考察」(Discussion)の冒頭の部分。なぜなら「そこに筆者の思いがいちばん込められているから」だそうです。論文はそもそも研究者が研究者のために書いたものであり、臨床家として実臨床に役立つメッセージを手っ取り早くつかみたいなら、そういう読み方もあると香坂先生は教えます。 ほかにも、アカデミック・ドクターになるための香坂先生らしいポリシー、ノウハウが詰まっている本番組、ぜひ一度ご覧ください。とくに、若い先生にオススメです。 CareNeTVでは、新しい学びの場として『CareNeTVスクール』を立ち上げました。香坂先生からZoomを利用して継続的に直接指導を受けられるコースの受講者を現在募集中ですので、ご興味がある方はこちらもチェックしてみてください。Dr.香坂の循環器エッセンシャル(全8回コース)[12月26日まで全話無料公開] -
なぜ左右対称で大きさがバラバラなのか?皮疹から病気を推理する楽しさを知る 2020/11/28
水曜午後9時からNHK BSプレミアムで放映されている『刑事コロンボ』。僕は毎週欠かさず録画して観ています。大半の回はすでに何度か観ているし、結末を覚えていることもある。でも、必ず最後まで楽しめる。その“感じ”はご理解いただけるでしょうし、そうした“コロンボ好き”が山ほどいるからこそ、20年以上前の番組が繰り返し再放送されるわけです。 臨床医学教育番組で、このような永遠に変わらない価値を持つコンテンツを作るのは至難の業です。それは言うまでもなく、医学は進歩を続けており、10年もすれば、かつての治療法がまったく行われなくなっていたり、より精度が高い検査機器が開発されていたり、新しい疾患が発見されているといったこともしばしばあるからです。 そんな中で、僕がCareNeTVの番組群で「不変の価値」を感じる数少ないものの1つが、『平本式 皮膚科虎の巻』です。平本力先生が、内科医向けに、難解な皮膚科診療の必要十分を指南するプログラムですが、看板に偽りなく、そのアプローチがオリジナリティに富んでいて、哲学すら感じます。2004年リリースなので、16年前の作品ですが、今でも楽しみながら十分な学びを得ることができます。 何が凄いのかは番組を観ていただくのが早いですが、文章で説明を試みるなら、それは、皮疹の特徴と診断名を機械的に結び付けて覚えさせるのではなく、その皮疹はなぜそのように発現したのか、論理的に突き詰めていく面白さにあります。 そのカギになるコンセプトが「因・機・疹、遠・近・考」の考え方。すなわち、その皮疹が体表にそのような形状で発現したのは、何が原因で(ウイルスなのか?器械刺激なのか?炎症なのか?等)、どのような機序だったと推理できるか?そのために、まず遠くから体表を全体的に見て分布を把握し、次に近づいて仔細に皮疹の特徴(大きさ、色、形、境界等)を観察する。そして、結論が出るまで繰り返し考える。さながら、刑事コロンボの捜査のようです。 もちろん、「左右対称の発疹は内因性の可能性が高く、まず中毒疹を考える」といったわかりやすいtipsもたくさんちりばめられていますが、それが、そもそもなぜそうなるのか?から解き明かしてくれるので、腹に落ちて、しっかり頭に残るのです。 で、オープンニングがなぜか時代劇。その演出に古さを感じますが、その古ささえも心地よく感じる、観て損のない名作です。 -
眼も診られる内科医に必要な指先のテクニック 2020/10/25
マイナー科という言い方があります。定義は曖昧ですが、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、精神科など内科・外科以外の診療科を包含して用いられるのが通例で、その源流は、どうやら医師国家試験対策での分類にあるようです。 自分の科が「マイナー」だと言われるのはあまり気分がよくないだろうと思い、普段は使いませんが(と言いながら今書いていますが)、仕事上、頭の中でそういう括り方をすることはよくあります。いわゆるマイナー科は、専門特化されているが故にメディアとしてコンテンツ企画を成立させにくい領域だからです。 しかしながら、CareNeTVにもマイナー科と言われる科の番組もあります。 『Dr.加藤の「これだけ眼科」』はその代表格。加藤浩晃先生が「眼科医ではない先生にも眼科のこれだけは知っておいてほしい」というところだけをまとめており、そのコンセプトを端的に表現したタイトルも個人的に気に入っています。 本編をご覧いただければ、内科医が知っておくべき、行うべき眼科の必要十分が押さえられるはずですが、全7話のうち1つだけというならば、最終話の「眼科コモンディジーズはこれだけ」をお勧めします。 加藤先生によると、非眼科医が出合う眼科疾患の80%は前眼部疾患。その診察に、フルオレセイン染色を活用し、上眼瞼の翻転ができると、幅がぐっと広がります。 上眼瞼の翻転とは、眼科医が上瞼を指でクルっとひっくり返すアレですが、慣れないと簡単ではありません。初心者は、綿棒を使うと上手くできるそうで、加藤先生は研修医に最初はこのやり方を教えているとのこと。その具体的な手順ももちろん番組内で紹介しています。 「これだけ科」は残念ながらまだ眼科だけです。この記事を読んで「うちの科でもできるかも?」と思った他科の先生がいらっしゃったら、ぜひご連絡ください。番組化を検討します。 -
全期間1位!医学コンテンツの常識を変えた“イワケン”スタイル 2020/09/26
どんな情報サイトでもランキングは人気があります。そのサイトで面白いコンテンツを探そうと思ったら、ランキングを見るのが一番手っ取り早いし、そのようにして、多くの人がランキング上位のコンテンツを見るので、そのコンテンツのページビューはさらに上がり、評価が高まっていきます。 CareNeTVには、月間、年間の視聴ランキングだけでなく、サイト開設からの全期間ランキングというものがあります。ニュースサイトではなく、医学教育動画サイトだからこそ、意義が大きいランキングだと思いますが、現在その1位は、岩田健太郎先生の『Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND』です。 岩田先生についてはもはや説明不要でしょうが、同様に多くのヒット医学書をものしている倉原優先生が、コンテンツクリエイターとしての岩田先生について、CareNet.comの対談の中でこう評しています。僕もまったくその通りだと思うので、引用させていただきます。 「岩田先生は、『抗菌薬の考え方、使い方』という本で、医学書と小説を足した、寝転んで読めるような“読み物としての医学書”というジャンルを作り出した。これが、岩田先生は怪物級にスゴイと思う理由です。読み物としての医学書というジャンルができたことで、日本の医学書出版業界のトレンド―文化ができたんだと思います。」(CareNet.com「Dr.倉原の俺の本棚」より) CareNeTVの番組でも、岩田先生のレクチャーには、ほかの大半の先生方と違う大きな特徴があります。それは、スライドを使わないことです。番組のテーマに沿って大きな枠組みを事前に決めておいて、あとはアドリブというか即興で話します。それで内容がしっかり伝わるし、聴く者を飽きさないどころか、イキイキとしたライブ感で引きずり込む。この“イワケン”スタイルは、医学書よりもマネするのは難しいでしょう。 件の『Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND』は、まさに“イワケン”スタイルを堪能できる作品。2012年の制作なので薬の適応などやや古くなっているところはありますが、第3回の「薬理学を武器にせよ」など、感染症治療でもっとも大事な原理原則が圧倒的な熱量とともに頭に入ってきます。 見れば、感染症を学べるだけでなく、人に何かをうまく伝えるヒントも見つかるかもしれませんよ。 -
暑すぎる夏に、愛され続けるCareNeTVの吉本新喜劇 2020/08/28
最近テレビでバラエティ番組などを見ていると、「お笑い第七世代」という言葉をよく耳にします。ウィキペディアによると、2010年以降にデビューした若手お笑い芸人を指す総称だそうですが、「じゃあ、第三世代って誰あたりなんだろう?」「ウッチャンナンチャンは第何世代?」とか、どうでもいいことをいろいろ考えてしまいますが、お笑いのスタイルが時代とともに変容しているのは、誰もが肌で感じるところです。 一方で、変わらないお笑いの型もあります。COVID-19で不幸にも命を落とした志村けんさんらが作り上げたドリフターズのコントは、 今の子どもたちが見ても大笑いするそうです。時代を超えた普遍性があるということでしょう。そんな変わらないお笑いの究極が今なお人気の吉本新喜劇ですよね。 CareNeTVにも、吉本新喜劇のような番組があります。と言えば、みなさん思い浮かべるものは一つしかないはず。そう、林寛之先生の『Dr.林の笑劇的救急問答』です。 僕はこの番組の生い立ちを知りません。僕がケアネットに入社したときには、それはすでに当たり前にあったからです。しかし、ケアネットに入るずっと前から、その存在は知っていました。ケアネットと言えば、林先生。林先生と言えば、ケアネット。そんな感じ。今でも、初対面の先生にケアネットの話をすると、「ああー、あの林先生のね」と返ってくることしばしば。毎月行っている視聴者の満足度調査でも、常に圧倒的な支持を得ています。 僕が『Dr.林の笑劇的救急問答』を吉本新喜劇になぞられる理由は言うまでもありません。なにせ「笑劇的」です。言葉の印象そのままの昭和な感じの寸劇。それを学術的な臨床講義のアイスブレークにする構成。そのスタイルが確立され、続いています。 この寸劇の脚本は、すべて林先生の自作。出演者は福井大学・福井県立病院の若手医師や研修医の方々ですが、そのキャスティングも林先生自ら行っています。臨床医としてはもちろん、脚本家、プロデューサーとしての才能にも脱帽です。 9月から最新Season16がスタートするこのシリーズですが、記念すべきSeason1では、熱中症を取り上げています。ただでさえ暑いのに日本中がマスクに覆われる2020年夏に打ってつけではありませんか?15年前の番組なのでガイドラインが変わっている部分もありますが、本質的な考え方は同じです。何より吉本新喜劇ばりのベタなオチ。僕は好きです。 -
「京都にスゴい医者がいるらしい」日本中の内科医が唸ったEBM診断学 2020/07/26
「京都の洛和会丸太町病院の上田先生というのはスゴいらしいよ」 僕は職業柄、常に優れた臨床医探しのアンテナを張るようにしています。今から7、8年前でしょうか?その頃、とくにCareNeTVの新しいスター講師を探していて、ことあるごとに、いろいろな先生方に「どこかに、いい先生、いないですかねー?」と尋ねていましたが、そんな中で上田剛士先生の噂を聞きつけました。 ほぼ時を同じくして、医学書院から「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」が発刊。今や内科医の定番とも言える同書ですが、発刊当時は、その異次元のクオリティーに、日本中の“心ある内科医”が驚愕したものです。 今Amazonのレビューをのぞいても、「今更改めて言うほどでもないが・・・この本は神です」「成書の知識が、どんどん繋がって、現場で役立つ知識に変わっていくよう」といった絶賛コメントが並んでいます。 ともかく一度お目にかかりたいと、なんとかアポイントを取りつけ、暑い夏の京都を訪れたのが2014年。 面会前、僕が頭の中に描いていたのが、当時テレビで流行っていた「ドクターG」をいわば普遍化した番組。ドクターGでは、実際の症例を用いて、さまざまな症状から、1つの診断という答えを絞り込んでいくわけですが、僕のアイデアは、外来でよく遭遇する症候から、およそ考えうる疾患を網羅できないか、というものでした。 「外来で出合う8割の症候をカバーしたいと考えているんですが…」 初対面の僕のざっくりとしたお願いに上田先生は、少し間を置くと、「できると思いますよ」と、さらりとおっしゃいました。あの冷徹な趣きで。 それが結実したのが『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断』です。3シリーズで、主要20症候をカバー。とことんエビデンスに立脚した上田先生ならではの精緻なアプローチで、今やCareNeTV屈指の人気番組になりました。 番組タイトルも当時のテレビ番組「たけしの本当は怖い家庭の医学」をもじったものです。僕が案出したわけではなく、番組にも出演している若い先生の「『たけしの本当にスゴい臨床医学』でいいんじゃないっすか?」という収録の合間の何気ない一言を拝借しました。 ぜひご覧ください。本当にスゴいですから。『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断』『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断2』『Dr.たけしの本当にスゴい症候診断3』 -
外科医は何を見て、何を考えているのか? 2020/06/28
「精神科という科があって本当によかった。初期研修のとき、私、絶対、内科も外科もできない!と思いましたもん」。先日ある精神科の先生からこんな話を聞きました。 一口に医師と言っても、診療科によって、実際に日々行なっている「仕事」は大きく異なります。科ごとに得手不得手、向き不向きがあるでしょうし、好き嫌いもあるでしょう。何科を選ぶかは、医師になるという決断と同じくらい大きな人生の分かれ道なのではないかと想像します。 診療科目は多岐に渡り、現在さらに専門分化が進んでいますが、臨床に進む医師の多くはまずざっくり、内科系か外科系かで分かれるのではないでしょうか。 CareNeTVのプログラムは、幅広い医師を対象とした内科系のものが多いのですが、外科に特化したものもあります。『Dr.みやざきの鼠経ヘルニア手術 テクニックコレクション』もその1つ。手術の中で最も件数が多く、外科医の多くが初期に経験する鼠径ヘルニア修復術に焦点を当てた手術手技の教育番組です。 鼠経ヘルニア手術の主な術式は、高位結紮術、プラグ法、DK法、UHS法、リヒテンシュタイン法などがあります。これに大腿ヘルニア、女性の鼠径ヘルニアを含めたさまざまな手術の様子を、日本有数の症例数を誇る宮崎恭介先生が、何を考え、何のために、何をしているのか、自ら解説しながら見せていくのが特徴です。 僕も、その手際の良さと解説のわかりやすさに、思わず見入ってしまいました。主に、外科のトレーニング中の先生方に、達人の思考とテクニックを「術者目線」で体感してもらうことを意図して企画した番組ですが、どの診療科に進むか検討中の臨床研修医や医学生の方にも役立つのではないかと思います。 この番組を見て「面白そう」「できそう」「やってみたい」と思ったら、それだけで、きっとかなり外科向きの方なのではないでしょうか?もちろん、僕は絶対できないと思いました(笑) -
食は喜び。「口から食べさせる」技術が詰まった一本 2020/05/24
全国民が外出を自粛し、Stay homeに励んだ結果、新型コロナウイルス感染の第1波が収束に向かいつつあります。かく言う僕もこの1ヵ月はほぼ在宅勤務で、この原稿も家で書いています。 外に出られない、人と会えない、というのはつらいものです。日々の楽しみと言えば、食事くらい。こういう状況になると、食というのは、人間のQOLにとって本当に重要なものだと改めて痛感します。 そんなことを考えていると、6年前の1つの番組を思い出しました。『Dr.野原のナルホド!摂食・嚥下障害マネジメント ~キュアからケアへ~』。患者さんに、口からものを食べてもらうことの大切さを力説する野原幹司先生に当時いたく共感したのを覚えています。 急性期治療中のため、あるいは誤嚥性肺炎防止のため、医師が患者さんに経口摂取を禁じるケースは多々あります。もちろん、それは致し方ないことです。しかし、認知症や寝たきりの高齢者が一度、経管栄養や胃瘻になってしまうと、一切経口摂取できないものとみなされ、口から食べさせる努力を医療者がやめてしまう。そして、さらに廃用が進み、完全に経口摂取できなくなってしまうという実態があることを野原先生は憂います。 端的に言うと「少しでも口から食べられる限り、少しでも口から食べさせろ」というのが野原先生の一貫した主張です。なぜなら、食べることは人生の喜びそのものだからです。 「胃瘻イコール禁食ではない」(胃瘻から経口摂取に戻せることもあるし、胃瘻が造設されていても口から食べてもよい)。 「誤嚥してもいいじゃないか」(誤嚥性肺炎を恐れるあまり経口摂取を無闇に禁じるより、誤嚥しても肺炎にならない方法を考えるべき)。といったメッセージには、ドキッとする医療者も多いのではないでしょうか。 もちろん番組には、高齢者が口から食べることによって生じる誤嚥性肺炎のリスクを最大限軽減するための知識、ノウハウが満載です。医療者がこの番組を通して気づき、学び、経管栄養、中心静脈栄養、胃瘻が常態化して食べることを忘れてしまったお年寄りが一人でもその喜びをまた味わうことができたら、野原先生も本望だと思います。 さて、この原稿を書き終えたので今日の仕事は終わりです。今夜は何を食べようかなー? -
大曲先生、忽那先生のライブ感溢れるレクチャーで過ごすGW 2020/04/26
新型コロナウイルス感染拡大で世の中が一変してしまったこの1ヵ月。学会開催どころか、外出や会食、人との接触が大きく制限され、普通に生活することもままならなくなりました。そんな中で、最前線で文字通り体を張って奮闘している医療者の方々には本当に頭が下がります。ありがとうございます。 ゴールデンウイークも例年とは違った意味合いを帯びてしまいましたが、この状況でこの時期に僕が勧めるとしたら、どんな番組だろう?と、つらつら考えて思いついたのがこちらです。 『国立国際医療研究センター総合診療科 presents内科インテンシブレビュー』。2017年1月14~15日の2日間にわたって同所で開催された集中型セミナーを収録させていただいたものです。 CareNeTVの番組は、見る人に興味を持ってもらえるような演出を施し、作り込んだスタジオ収録のものが大半です。講師の先生が言い淀んだり間違えれば撮り直せるし、後で編集を加えることで、ポイントをよりわかりやすくでき、効率的に学べるのがメリットです。 しかし、リアルのセミナーには、もちろんリアルのセミナーの良さがあります。場合によっては聞き取りにくかったり、少々言い間違えていることもあるかもしれませんが、同じ空間を共有しているからこそ感じる迫力、熱量があります。リアルのセミナーが開催できない今だからこそ、そうしたライブな空気を感じられる、この番組を思い出したのです。 内容は以下のとおり。個性豊かな12人の医師がご自身の得意分野で、たくさんの参加者の前で熱く熱く講義しています。初期研修医向けではなく、専門後期研修医、知識をアップデートしたいシニア医師に向けて、内科領域でのワンランク上のセミナーを意図したと当時伺いました。外に出られないゴールデンウイークにちょっと時間をとって自宅で学ぶには打ってつけかと思い、5月6日(水)まで無料公開いたします。 就中、新型コロナ騒動でテレビでお見かけすることが多くなった、大曲先生、忽那先生の“コロナ前”の名講義は必見です。・第1回 リンパ腫の臨床診断 “Internist's lymphoma”(講師:國松淳和先生)・第2回 パーキンソン病の話(講師:井口正寛先生)・第3回 大血管炎~IgG4関連疾患も含めて~(講師:萩野昇先生)・第4回 Young Doctor's Case Report(講師:九鬼隆家先生)・第5回 感染症診療のロジック~常に丹念に病態を詰め切る~(講師:大曲貴夫先生)・第6回 呼吸器内科医から見た心不全(講師:櫻井隆之先生)・第7回 小腸疾患 Update 2017(講師:櫻井俊之先生)・第8回 NEJMへの道~2017 飛翔編~(講師:忽那賢志先生)・第9回 陰性感情を考える(講師:加藤温先生)・第10回 つつが虫病 シマからみる、シマでみる ~過去と現在、日本、沖縄、世界に眼をむけて~(講師:成田雅先生)・第11回 低K血症をスッキリ理解する Keep It Simple, Stupid.(講師:須藤博先生)・第12回 “元気で長生き”を維持するために 科学的根拠に基づくヘルスメンテナンス(講師:佐田竜一先生) -
葛根湯の適応を正しく見極められる東洋医学の診察法 2020/03/28
新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界が大きく混乱しています。医療者のみなさんはその最前線で本当にご苦労されていると思いますが、先生方と話していると、講演会や種々の集まりが相次いで中止になり、現場はもちろん大変だが、時間的にはむしろ余裕ができたというような声も聞きます。 そんなとき、ご自宅で新しい知識に触れてみるのも一法かと思います。 たとえば、東洋医学の診断法。日常診療に、漢方薬を取り入れている先生は多いと思いますが、東洋医学の診察は、どのように行われ、その結果は薬剤の選択にどう反映されるのか、あまり意識されていない先生も少なくないのではないでしょうか。 『Dr.浅岡の指導医のための漢方医学講座』第5回では、日常診療ですぐ使える「東洋医学の診断方法」の基本をレクチャーしています。 東洋医学の診察は、望・聞・問・切の四診で構成されています。 望診は、目で体格、舌、皮膚、態度を見る診察。聞診は、咳嗽、喘鳴、声などを聴く診察。聴診器などの器材は使いません。臭いをかぐことも聞診に含まれます。問診は、西洋医学の問診と同じ。切診は、腹診、脈診という2つの触診のことです。 これが日常診療にどのように生かせるのか? たとえば、風邪の初期症状によく処方される葛根湯。葛根湯は、東洋医学では表寒証が適応です。逆に言えば、風邪の初期でも裏または熱の証の時は葛根湯は適応にならないということになります。 表か裏か、寒か熱か、という証の診断は、先の四診で行うわけですが、浅岡俊之先生は西洋医学ではあまり行われない舌診は、その判定にとても有用だと説きます。舌の色で寒熱、苔の有無で表裏が簡単に判別できるからです。 脈診も同様です。脈診は本来とても複雑だそうですが、脈が体表に浮いている浮脈か、体表から沈んでいる沈脈か、で表裏の判定はできます。東洋医学の脈診は、橈骨動脈に人差し指から薬指の3本の指をそろえて当てて行いますが、人差し指が患者の親指を向くようにするなど、その方法も動画で細かく解説されています。 もちろん、番組ではこのほかにもすぐ臨床で使える東洋医学の診察のティップスが詰まっています。さらに、CareNeTVでは、基礎から応用まで、浅岡先生の漢方についてのレクチャーシリーズがそろっていますので、興味を持たれた方はチェックしてみてください。そのお役立ち感と面白さに魅せられ、いまだ人気が衰えない理由が理解できると思います。 -
なぜ、胸部X線「ルネッサンス」なのか? 2020/02/24
番組や記事のタイトルをつけるのは、楽しい仕事です。しかし、同時に難しくもあり、責任も感じます。なぜなら、どんなにいいコンテンツもタイトルがイケてないと、視聴者や読者がそもそも開いてくれない、よって、見てくれないからです。一目でそのコンテンツの意味や価値、雰囲気を巧く伝える「カッコいいタイトル」付けには、毎回ない頭を絞って、絞って、絞り抜きます。『Dr.長尾の胸部X線ルネッサンス』。2016年制作の番組ですが、今見てもまあまあよくできたタイトルではないかと思います。手前味噌ですが。言うまでもありませんが、ルネッサンスは14世紀にイタリアで始まった古代ギリシャ・ローマの文化を復興させようという文化運動のことです。語源的には、フランス語で「誕生」を意味するnaissance(ネサンス)に接頭辞reが付いて「再び生まれること」を意味します。この番組は、CT、MRI全盛の現代において、誤解を恐れずに言えば、少々古びた画像検査である単純胸部X線の価値を、長尾大志先生の名ティーチングによって復興、再生させることを目指しています。番組の冒頭で、先生が話しているように、日本ではCTが広く普及していますが、それでもCTを撮れない状況はいくらでもあります。そんなとき、X線写真でも病状をしっかり把握できるスキル。CTが3次元で複雑で詳細な画像情報を提供してくれる時代だからこそ、「単純」なX線を読み解く属人的なテクニックに光を当てたのです。当然、胸部X線をきちんと読影するためには、胸部の解剖がしっかり頭に入っている必要があります。なので長尾先生は、まずブロンコ体操の繰り返しで肺の解剖を脳に染み込ませます。そして、シルエットサインなどのテクニックを駆使して、X線写真という2次元のイメージを頭の中で立体的に捉えていきます。長尾先生の読影テクニックは、臨床ですぐ役立つだけでなく、謎解きにも似た知的刺激に満ちています。要するに、楽しい!こうした画像診断の世界を平易に説明するには、書籍より映像の方が優れていることは同意いただけるでしょう。より理解しやすくするために3次元CGには結構お金をかけました。肺が空間に浮かんで回っています(笑)。そういう意味でもお得です。そんな長尾先生の胸部X線ルネッサンス運動の成否を、ぜひ映像で見届けてください。 -
急性発症の頭痛。右半身筋肉低下・羞明あり。その意外な病名 2020/01/26
夜間、救急外来にやって来るさまざまな症状を呈する患者。軽症だったり、症状が治まっていた場合、その患者を自宅に帰してもいいか?入院させて検査、治療を進めるべきか?その判断は、どのような医師にとっても、緊張を強いられる、ある意味、永遠のテーマと言っていいかもしれません。頭痛、胸痛、腰痛、腹痛という代表的な痛みについて「帰してはいけない」場合をエキスパートが語り合う『聖路加GENERAL Dr.石松の帰してはいけない患者症例』。2012年の制作の番組ですが、その実用性ゆえか、今も多くの先生方にご覧いただいています。頭痛篇では、石松伸一先生の症例提示をもとに、OPQRSTというチェックリストを使って診断を進め、レッドフラッグを見つけ出す方法を、徳田安春先生が解説しています。たとえば、こんな症例。25歳、女性。OPQRSTに基づくと、O(Onset;発症様式)は「急に発症」、P(Palliative/Provocative factors;緩解・増悪因子)は「前日夜に赤ワインを飲んだ」、Q(Quality/Quantity;性状・程度)は「程度は7/10で拍動性」R(Region/Radiation;場所・放散部位)は「頭部左半側」、S(associated Symptoms;随伴症状)は「嘔吐、羞明、右半身筋力低下が先にあり」、T(Time course;時間経過)は「3時間前から継続」。この患者さんは、片頭痛の既往があり、母親も片頭痛という家族歴があります。頭痛の性状、場所などを勘案すると片頭痛が当然疑われますが、右半身筋力低下という症状が極めて気になるところです。いずれにせよ、この症状の患者さんを軽々に帰すことはできないと思いますが、徳田先生が下した診断名は意外なものでした。この他にも、救急で遭遇しがちな興味深い症例と診断のためのティップスが気軽にたっぷり学べる1本です。 -
ジェネラリストvs.スペシャリストか?それとも…? 2019/12/22
ジェネラリストとスペシャリスト。医師をそのような枠組みで分類する考え方があります。ジェネラリストは、幅広い領域を一定レベルまで診る医師、スペシャリストは専門領域を深く診る医師。ときに両者は対立軸で捉えられることもありますが、両者がうまく噛み合うことで、総体として良質な医療が効率的に提供されることは言うまでもありません。 「この番組企画したの、僕なんですよ」 『スペシャリストにQ』の収録の合間、ホスト役の前野哲博先生(筑波大学 総合診療グループ長)がゲストの各科のスペシャリストの先生に誇らしげにそう話しかけているのを目にすることがあります。ジェネラリストとしてスペシャリストに聞きたいこと。それをジェネラリスト代表として質問し、5分で簡潔にまとめてもらう。それが前野先生のアイデアであり、このシリーズの基本コンセプトです。 『スペシャリストにQ』は2013年の循環器編を皮切りに、これまで8シリーズをリリースしていますが、スペシャリストの先生にできるだけ、答えを言い切ってもらうことも大事にしています。たとえば、ガイドラインに第1選択薬が2つ、3つ並列に書かれているとき、「結局のところ、どれを使ったらいいの?」というのは、ある意味、一番素朴な疑問だからです。 呼吸器編の第7回「COPDの薬物療法は何から始める?」。当時のガイドラインでは並列の位置付けだったLABAとLAMAについて、長尾大志先生(滋賀医科大学 呼吸器内科)は「われわれの感覚ではLAMA」と言い切ってくれています(のちに、LAMA優先にガイドラインが改訂)。これこそが本シリーズの目指すところであり、真骨頂です。 ジェネラリストの素朴な疑問に対して、スペシャリストが変な忖度なく、臨床家としての誇りと自信を持ってスパッと答える。そんなジェネラリスト+スペシャリストな世界観をこれからも体現していければと考えています。 -
小児の腹痛、見逃しご法度の5疾患を鑑別できるか 2019/11/29
救急で来る小児の腹痛で、絶対に見逃してはいけない疾患は5つだそうです。その5疾患が何だかわかりますか。それらを的確に鑑別する自信がありますか。もし少しでも自信がないようであれば、ぜひこちらの番組をご覧ください。30分で不安が解消されます。その番組とは、『こどものみかた~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~』。一般社団法人こどものみかたが開催している「小児救急T&A(Triage & Action)コース」に基づいたこのプログラムは、小児科を専門としていない医師が、夜間急患当番などで「こどもを診ざるを得ない場面」を想定し、身に付けておくべき小児患者に対する必要十分な対応法を体系的に学べるのが特徴です。さて冒頭の問いの答えですが、こどものみかた代表理事で相模原市国民健康保険内郷診療所 所長の土肥直樹先生が、番組内で挙げる小児の腹痛で見逃してはいけない5疾患は、虫垂炎、腸重積、鼠径ヘルニア嵌頓、精巣捻転、アレルギー性紫斑病の5つです。鑑別のためには、まずトリアージ。小児の全身状態はAppearance(外見)、Breathing(呼吸)、Circulation to skin(皮膚への循環)のABCで判断します。外見の評価方法としてはPALSという独自の手法を提唱。具体的な評価の仕方は、このシリーズの第1回「トリアージ」で説明しています。PALSで評価を行ったうえで、たとえば腸重積を疑った場合、嘔吐、血便、腹部腫瘤が代表的な臨床所見になります。しかし発症早期では、この3主徴がそろうのは20%程度であり、疑ったら血便等がなくてもエコーで診断することが必要。その際のプローブの当て方のコツ、特徴的な所見などを解説していきます。番組では、先の5疾患で、このように見落とさないためのアプローチをレクチャーしていますが、実は、小児の腹痛で最も多い原因は便秘。その対処法も最後にしっかり教えています。とくに注意すべきは、家で便が出ていても便秘は起こりうるということ。そして「小児救急の腹痛で、浣腸してはいけない疾患はない」(土肥先生)ため、小児救急で腹痛を見たら、便が出ているか否かにかかわらず、まずは浣腸を行うのが原則となるのです。